夏の空気感や日差し、空の青にも負けないマゼンタピンク色の艶やかさは、色の方からヒトの視界に飛び込んでくるような感覚を覚えることがある。
その日は、牡丹なのか芍薬なのか区別がつかなかったけれど、通りかかった建物のエントランス脇に作られている花壇に咲いていた、マゼンタピンク色をした素敵な花が目に留まった。
牡丹も芍薬も春から梅雨前辺りに花を咲かせるのだけれど、花の色や咲き姿が似ており、慣れていないと区別し難い花である。
それもそのはず、牡丹も芍薬もボタン属の植物とのことだから、植物界では親戚のような関係だ。
牡丹と芍薬の名を挙げましたけれど、今回は牡丹の扉の奥にある様々な世界をちらりのぞき見。
そのように思っております。
ご興味ありましたら、ご一緒に牡丹旅などいかがでしょうか。
牡丹の花はそのゴージャスな美しさから古より和歌に詠まれたり、絵画のモチーフにされたりと、多くの人を魅了してきた花なのですが、意外にも、日本には漢方薬として伝わってきたと言われています。
もともと中国生まれの植物で根の部分は、止血剤や鎮痛薬、炎症を抑える薬として使われていたのだとか。
だから戦国時代の日本でも、戦時の負傷に備えて多くの牡丹が植えられていたといいます。
しかし、あの美しさ、華やかさ、艶やかさを持った花ですからね、人々を魅了するのに時間はかからなかったようで、鑑賞用としても愛されるようになったという話が残っている花です。
そのことを伝えているかのように、牡丹が日本に伝わってきた頃から歌人たちの和歌に度々登場します。
他にも、皆さんご存知の日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎。
彼も晩年、牡丹の花を作品に描き残しています。
それが、花札の絵柄「牡丹に蝶」です。
「牡丹に蝶」という名の花札の絵柄は、花札の中でも華やかさが抜きん出ており、花札を知らなくても、どこかでこの絵柄を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
牡丹と同じく華やかで艶やかな花は多数ありますけれど、それと同時に堂々とした印象を与える花はそう多くはないように思います。
それが理由になっているのかどうか、その辺りは分からないのですが、牡丹は「百華の王(百花王とも)」と言う異名を持っています。
しかも一つではなく、花王、富貴花(富貴草)、花神など「王」を連想させる、存在感溢れる異名を多数持っているのです。
確かに、漢方薬としてのみ使うには勿体ない美しさですから、観賞用としての用途に特化した流れにも頷くことができる気がします。
牡丹は他にも様々な世界をのぞくことができる花なのですが、その辺りはまた機会がありましたときにでも……。
牡丹の時季はそろそろ終わりを迎えておりますので、運よく見る機会がありました際には存分にご堪能下さいませ。
そして、今季の牡丹を見逃してしまった方も大丈夫です。
品種によっては秋頃に咲く牡丹もありますので、秋の牡丹をお楽しみに。
何かしたの形で牡丹に触れる機会がありました際には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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