えっ、ムシムシッとする。
先日、寝ぼけまなこでベッドルームからリビングへ移動して真っ先に感じたことである。
来たな、来たな、来たな、夏―。
あまりの湿度の高さに声を出す気力を削がれ、全ての言葉はテロップという形で脳内に流れた。
窓を開け放ち、除湿冷房のスイッチもオン。
この動きがルーティン化する季節到来である。
そう言えば先日、「草いきれ(くさいきれ)」という言葉を知った。
草がどうしたって?と行間を読んでみようと試みたのだけれど、いまひとつピンと来なかった。
ネットで検索してしまえば早いことは重々承知しているのだけれど、時々指先が、あの薄いくせに丈夫な辞典特有の紙質感を求めるため、辞典をひくことにした。
草いきれ(くさいきれ)、耳慣れないこの言葉は夏の言葉とのこと。
肝心な意味はというと、夏に太陽を浴びていた植物が湿気を放って、辺りをムシッとした空気で覆うけれど、あの湿気のことを草いきれ(くさいきれ)と言うのだそう。
植物も生きているため、葉の表面温度が上がれば自身の体温調節のために植物内の水分を蒸発させている。
私たちは、草木の匂いと共に、その水蒸気を湿気として感じ取って、ムシッと、あるいはモワッと、ムッと感じているのだそう。
あの植物から発せられる水蒸気は人でいうところの汗だという表現を方々で見かけた。
そう言われてみればそうなのだけれどと思いながら湿度を感じ直してみると、ムシムシ感が更に増すように思うのは私だけだろうか。
でもまぁ、植物も人と同じで、昨今の暑さ対策に命懸けということなのだろう。
ちなみに、「いきれ」の語源は息切れで「熱れ」と書いて「いきれ」と読むのだそう。
息切れしてしまいそうなくらいに暑くて、湿気でムシムシッとするという意味で、この湿気を発しているのが「草木」だから「草いきれ」。
そして、スタジアムやお祭りなどの人混みの中で熱気によってムシムシッと感じることがあるけれど、こちらは熱気の発生源が人なので、「人いきれ」と表現するのだそうだ。
湿度が上がっている要因は様々なのだけれど「草いきれ」と「人いきれ」、やはり、起きていることに大差はないようだ。
そして、年々増していく夏特有のムシムシ感は、地球上にいる全ての生き物が、一生懸命に生きているということかと腑に落ちた。
湿度に嫌気がさしてしまいそうなときには、地球上の全ての生き物が頑張っているのだと思いつつ、「草いきれ」「人いきれ」という言葉をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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