町の洋菓子店が閉店する。
生まれ育った町に住んでいるわけではないため、子どもの頃から慣れ親しんだ洋菓子店ではないのだけれど、
時々利用させていただいていた洋菓子店だったこともあり、ほんの少しだけ淋しいという気持ちが湧いた。
どのようなことも続けるということは、簡単ではないなと改めて。
旅先で時代を越えて愛され続けているお店を目にすることがある。
お店側の様々な努力はもちろんのことなのだけれど、それを愛す側との二人三脚であるようにも思う。
どちらも、相手がいないことには成り立たせることができないのだ。
そのようなことを思いながら、きっと、最後になるであろう店内に足を踏み入れた。
私と似たような気持ちで足を踏み入れたお客が、どれくらいいたのかは分からないけれど、狭い店内は人が溢れかえっているような状態だった。
人と人の隙間からショーケースをのぞくと、洋菓子の多くは売り切れており、残念ながら、私が購入できそうな商品はなく、出入口へと向かうと、小さな陳列棚にルバーブのジャムが並んでいた。
ルバーブとは、フキに似たような見た目をした野菜で、長く伸びた茎の先に大きな葉が付いている。
葉には毒性があるそうで口にするのは茎の部分のみなのだけれど、この茎はグリーンのものだけでなく、渋くて美しいワインレッドのものや、グリーンからワインレッドまでのグラデーションになっているものなどがある。
中でもワインレッド色に染まったものは、その見た目の鮮やかさからジャムやスイーツに使われている。
ルバーブは本来、酸味が強い野菜とのこと。
中には梅干しのように酸っぱいと言う方もいらっしゃるのだけれど、甘さが加えられた加工品しか食したことがない私は、まだその酸味の洗礼を受けたことがない。
というのも、ルバーブは寒冷地で栽培される野菜で国内では主に長野県や北海道で栽培されているため、フレッシュなものを手に入れる機会がないのだ。
しかし、ルバーブの収穫時期が初夏と初秋とのことで、運が良ければこの時季、渋いワインレッド色をしたルバーブのジャムやスイーツに出会えるのだ。
近々消えてしまう洋菓子店の隅に並んでいたルバーブのジャムを見て、最後まで手を抜かず、旬のものを届けようとしてくれていたお店側の気持ちを垣間見たような気がした。
近々消えてしまう洋菓子店を前にして淋しくなるなと感じたのだけれど、その場所に新しい何かが建てば、私はいとも簡単にそちらに気持ちを持って行かれるのだろうと思う。
それを悪いことだとは思っていないけれど、このお店の味を、もう少し味わってみても良かったな。
そのようなことを思いつつ、洋菓子店を後にした日。
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