長年愛用していた箸置きをキッチンの床に落として割ってしまった。
和にも洋にも馴染むシンプルなデザインで気に入っていたのだけれど、別れは突然であった。
いつまでもあると思うな何とやらではないけれど、私は、その箸置きが無くなると考えもしていなかったようだ。
いつの間にか箸置きの数が減ってしまっていたこともあり、今年の夏は、素敵な出会いがあればと、箸置きを見つけては近づくことが増えた。
しかし、出会うのも簡単ではないようで、なかなか素敵な出会いが無いまま日が過ぎていた。
探し求めることを止め、ふらり小旅行へ出かけたときだ。
とても素敵な箸置きが目に留まった。
割ってしまった箸置きのシンプルさを引き継いでいるかのようなデザインのものと、少し凝った水引デザインのものだ。
旅の高揚感に後押しされ、その両方のデザインをいただくことにした。
お店の方に、箸置きを包んでいただきながら、割ってしまった箸置きの話をしていると、水引は厄落としになるから割れたときには気を落とさないで下さいねと言われた。
水引は人と人や心と心を結ぶものとして古より大切にされてきたものだけれども、それだけではなく、水引は切れると厄落としになるのだそうだ。
だから陶器でできた水引デザインの箸置きが割れてしまったときというのは、使っていた人の厄落としが完了したサインなのだとか。
縁起物モチーフをした箸置きが割れてしまったら、ネガティブなことが頭の中に浮かんでしまうと仰る方もいるような気がするのだけれど、
事前に、このように言ってもらえていたら、もし仮に手が滑って床に落として割ってしまったとしても、とても前向きな気持ちになれるだろうし、余計な心配をせずに贈り物として選ぶこともできるように思う。
しかしワタクシ。もしかしたら、陶器製の水引箸置きを気持ちよく買ってもらうための……と無粋なことがちらついたのはここだけの話だけれど、こうして上手に気持ちを整えられるのは生きていくための知恵の一つである。
日本には言葉にせずにメッセージを伝える方法がたくさんあるけれど包み方も、そのひとつ。
ぱっと見ただけでは同じ包み方に見える「合わせ包み(キャラメル包みとも)」と呼ばれる包み方があるけれど、この包み方には慶事用の包み方と弔事用の包み方がある。
ラッピング用紙を広げ、箱の底面を上に置き、ラッピング用紙の右側をボックスにかぶせたときに、紙の端がボックスの中心にくるよう箱の置き位置を調整する。
ラッピング用紙の右側をもとの状態に戻して、今度はラッピング用紙の左側をボックスにかぶせ、右側を重ねて、テープで留める。というのが、この合わせ包み(キャラメル包み)の簡単な流れだけれど、
このラッピング用紙の合わせは、慶事用の際には右側の用紙が上にくるように左→右の順に包み、弔事用の際には左側の用紙が上にくるように右→左の順に包むのがお作法である。
以前、こちらでも触れたことがある袱紗や風呂敷のお作法と同じなので、洋風スタイルの封筒を縦書きの状態で使う際も、このお作法を使うため、覚えておいて損はないように思う。
言葉にすることを躊躇うようなシーンでも、しっかりと思いを伝えられるなんて素敵なお作法だと思うのですが、いかがでしょうか。
明日すぐに使うことが出来る話題ではないのですが、必要なときに頭の片隅から引っ張り出してお役立ていただけましたら幸いです。
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