キッチンで岩塩を挽きながら、先日のできごとを思い出した。
スーパーの一角で必要なものをカゴに入れていると、杖を手にしたご婦人に、この中で一番減塩になるお醤油はどれかと尋ねられたときのことである。
ご婦人は体調に不安があるそうで、できるだけ塩分を控えたいけれど減塩と記されたものや情報が多すぎて選べずにいるとおっしゃっていた。
私も、身内の食事療法をサポートした経験があり、ある程度、ストレスを感じずに見極められるようになるまでの大変さは経験済みということもあり、何だか他人ごととは思えず、微力ながら選定のお手伝いをさせていただくことにした。
本来、塩分は味付けという意味だけでなく体を健やかに保つために必要な栄養素だけれど、食が豊かになり、食事をする回数や食事量も増えた上に、便利になっていくライフスタイルの変化などの影響もあり、知らぬ間に塩分を摂りすぎてしまっているという状況は多くの方に当てはまるように思う。
味付けと体の健やかさ以外にも、例えば、きな粉や、ぜんざいに使うお砂糖の量をセーブして少量の塩を足すだけで、きな粉や、ぜんざいの甘味を引き出すことができたり、
塩を使うことで食材の臭みを消すことができたり、変色を防いだり、食感を良くしたり、長期保存を可能にしたりといった様々な利点もあるため、
塩分の摂りすぎは体に良くないということが分かっていても、省くことができない場面が多い現状がある。
命に関わる様な理由で、医師から塩分を控えるように指示が出ているのであれば、それに従わなければいけないけれど、
健康維持のために出来ることをしたいということであれば、塩分を多く使用する加工食品の利用をセーブしたり、毎日使用する調味料などは減塩タイプのものや食塩無添加の中から好みのものを選んで塩分摂取量を減らすのもテである。
それでも、加工食品に頼ることもあるだろうし、外食をすることだってある。
そのような時には、取り過ぎた塩分を出来るだけ速やかに体外へ排出するために、カリウムを多く含む野菜や果物、お芋類などを一緒に口にすることで、体への負担を減らすことができることを知っておくと、目の前の食事を楽しみながら健康を気遣うこともできるように思う。
ここに足を運んで下さっている方は大丈夫だとは思うのだけれど、このような話題に触れる際には、念のために書き添えることにしているのは、
どんなに体に良い栄養素、食材だったとしても毎日同じものを摂取していていたのでは、栄養素によっては薬が毒になってしまう場合もあるということである。
何か一つの栄養素や食材だけを集中的に摂取する「ばっかり食べ」はせずに、今日は塩分が多い食事を口にするから、付け合わせや副菜でお野菜をたっぷり摂ろう、デザートはクリームたっぷりのケーキではなくフルーツを使ったものにしよう、翌日はシンプルな和食メニューを選ぼう、というように臨機応変に。
過剰摂取してしまった塩分を速やかに体外に排出するために必要となる栄養素、カリウムを多く含んでいる食材もひとつではないので、
幾つか記憶しやすいものを覚えておき、その時々の気分などで選ぶことができれば、カリウム以外の栄養も一緒に摂ることができるので、栄養が偏ることも防ぐことができるように思う。
塩分は、私たちの体にとっても生活にとっても必要なもので、カリウムを摂っていれば全てよしということではないことも忘れずに。
できる限り色々な食材を口にすることができればベストだけれど、思うような食事を摂ることができない日やラクをしたい日もあるものです。
そのような日も気持ち穏やかに過ごせるように、このような知識を知恵に変えていただけたなら幸いです。
本日も口福な時間をお過ごしくださいませ。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/