幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

金魚の歩みとモノゴトの見え方と。

f:id:hiiragi1111:20200504164811j:plain

金魚柄の箸置きを丁寧に洗ってみた。

金魚モチーフの季節は夏だから、これを使うのはもう少し先になるのだけれど、これからやってくる季節に思いを馳せて支度中である。

金魚は、豊かさや幸せ、富といった意味を持っているので縁起物として扱われているけれど、同時に魔除け、災厄除けのモチーフとしても大切にされている。

そして、その金魚柄には赤い金魚と黒い金魚がセットで描かれていることがある。

色のコントラストや配色によるデザイン効果を狙ったものであることが多いけれど、赤い金魚には豊かさや幸せ、富を呼び込むという意味があり、黒い金魚には邪気を吸い込むという意味が含まれている。

作者の意図がどこまで働いているのかまでを知る術はないけれど、この組み合わせは縁起担ぎに抜かりがないという見方で楽しむこともできるように思う。

このような意味が含まれていることを知ると、当然のことながら日本では古より大切に扱われてきたモチーフであるように感じるのだけれど、日本で、このような扱いをするようになったのは、大正から昭和頃だと聞いたことがある。

中国では古より金魚を八宝の一つとして扱っていたけれど、日本では八宝でもペットでもなければ、文様として扱われていたわけでもなかったという。

しかし、金魚は江戸時代半ば過ぎ辺りから絵画などに登場するようになり、いつしか着物や浴衣、和装小物で柄やモチーフとして使われるようになり今に至っていると、呉服店の方に教えていただいたことがある。

年齢を問わず身に纏える定番柄だとばかり思っていた私には、目から鱗が落ちたようだった。

f:id:hiiragi1111:20200504164828j:plain

と同時に、金魚柄にひと目惚れしてしまった外国の友人に、金魚は古くからの日本の定番柄のひとつで縁起物だと教えてしまったことがあることを思い出してしまったのである。

まぁ仮に大正からの模様だとして、大正、昭和、平成、令和だから「古くから」というのはギリギリセーフということにしておこうと思っている。

その友人が金魚にひと目惚れしたきっかけは、私が手土産として渡した日本の飴細工を包んでいたミニ風呂敷の柄にあった金魚である。

何か話のネタになるのか、本当に分からないもので、その時は金魚から繋がる日本のあれやこれやを知り得る全ての英単語と知識を駆使して伝えたように思う。

私の話を友人、知人たちは興味深そうに聴いてくれていたのだけれど、お祭りでの金魚掬いの話をした途端、その場の空気が凍り付いたことがあった。

私から見れば夜店の金魚掬いは夏の風物詩のひとつで、懐かしさや高揚感と共に夏祭りの記憶にダイヴすることができるような光景なのだけれど、友人たちが想像した光景は、彼らの目に動物虐待の光景として映ったのだ。

f:id:hiiragi1111:20200504164902j:plain

私はその中の一人に、「考えてみて。あなたが小さなプールに入れられて頭の上から大きな紙が降りてきて、その紙に掬い上げられるところを」と言われたことを、今でも時々思い出すことがある。

そう言われれば、そう思えなくもないけれど、掬い上げられた先に金魚にとってとても幸せな世界が待っていることもあるわけで。

当時、あの場での会話がどのようにして納まったのかは覚えていないけれど本質を見極めることは難しく、幸せは本人にしか分からないものである。

そのようなことを搔い摘むように思い出しながら、金魚柄の箸置きを収納場所に戻した日。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/