友人から、ラッキーモチーフの馬蹄の向きはどちらが正解なのか尋ねられた。
幸運が訪れますようにというメッセージと共に、馬蹄デザインのブローチをいただいたそうなのだけれども、
輪になっている部分を上にしても下にしても使うことができるようなデザインなので、正解があるのか気になったという。
私も同じ疑問を抱いたことがあるのだけれど、ヨーロッパでも両方の説を話す方々がいた。
ある方からは、馬蹄(正確には蹄鉄)の輪になっている部分を上にした状態で玄関に飾ると、馬蹄(蹄鉄)の下を通る人に幸運が降り注ぐのよと教えられ、
また別のある方からは、輪の部分を下にした状態で飾ったり、使うことで幸運を溜めることができるのだと教えられた。
そして、どちらを向けて飾っても、使っても、馬蹄(蹄鉄)そのものがラッキーモチーフなのだから、
その時々の気分で飾ったり使ったりすれば良いのだという方もいた。
私個人は、最後の「馬蹄(蹄鉄)そのものがラッキーモチーフなのだから、どちらの向きもあり」という説を採用しているのだけれど、
お世話になっていた老夫婦に、実際のところ、どの説が正解なのかと過去に尋ねたことがある。
すると、馬蹄(蹄鉄)がラッキーモチーフだという認識は国が異なっても、時代が異なっても変わらないように思うけれど、
馬蹄(蹄鉄)の向きの良し悪しに関しては、時代によって異なることもあるようだから、どちらも正解なのではないだろうかと言っていた。
日本にも「良い」とされて人々から好まれていたものが、時代が変わり逆の扱いを受けることがあった。
きっと馬蹄(蹄鉄)の向きも、日本のそれと同じようなことなのだろう、と思った。
それよりも、どうして馬蹄(蹄鉄)を飾ったり持っていたりすると、幸運が訪れたり、厄除けや魔除けになるのか。
その辺りに興味を持ち、調べたことがある。
そして、馬蹄(蹄鉄)そのものというよりは、馬蹄(蹄鉄)を作る鍛冶屋職人の技術がラッキーモチーフの鍵を握っていることが分かった。
今は簡単に鉄を溶かし、形を自由自在に変化させる技術が当たり前のように使われているけれど、
鉄を書こうする技術を遡ると、馬蹄(蹄鉄)を作る鍛冶屋の鉄加工技術は、
習得することが非常に難しい、魔法のような特別なものだったという。
その魔法のような職人技術が込められた馬蹄(蹄鉄)には、
その技術と同じくらい不思議な力が宿っていると見られるようになり、
それが馬蹄(蹄鉄)がラッキーモチーフとして親しまれるようになったきっかけだという説が、一説として残っているのだそう。
そして、ヨーロッパでラッキーモチーフとして珍重される馬蹄(蹄鉄)は古いもので、古ければ古い程ラッキーだと言われている。
これはきっと、現代のように鉄を簡単に加工することができなかった時代の職人の腕ひとつで作られた馬蹄(蹄鉄)だからなのだろうと思った。
形そのものに意味があってラッキーモチーフとして扱われているものもあるけれど、
そこに込められた職人の技術が鍵になっているモチーフは、珍しいように思う。
馬蹄デザインを目にした際には、ちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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