私は密封チャックが付いていない袋入り乾麺を開封する際、縦面の端をカットするようにしている。
袋の上部、横面をカットすれば開け口を最小限に抑えることはできるのだけれど、どうにもこうにも、残りを封じ難いように感じるのだ。
しかし、縦面をカットしてみると、開け口を最小限に抑えることはできないけれど、中身が湿気を吸ってしまわぬよう、開封面を何重にもクルクルと巻き込むようにして封じることができることから、もう何年もこの方法である。
既に詳細は記憶に残っていないけれど、どこぞやの飲食店の厨房内を覗いていた折に、料理人がそのような作業を行っており真似し始めたように思う。
その後、私のこの作業を目撃することとなった友人は、一瞬だけ「え?何をするの?」という空気を醸し出すけれど、理由を説明すると「それもありだね」と返してくれている。
器用な方や小まめな方は横面をカットしても、中身が湿気を吸わないよう、上手に封をするのだろうけれど、私にはこの縦面カットが合っているようである。
妙な話題からスタートした今回のお話だけれども、茹ですぎて食べきることができなかったお蕎麦がザルに盛られた状態でこちらを見ていたのである。
その横に置いてあった縦面カットで封を切った蕎麦を片付け、もう一度お蕎麦を眺め、ガレットを焼くことにした。
ザクザクと短くカットした茹で蕎麦をミキサーに入れ、更に卵と少量の小麦粉、牛乳を入れて混ぜ合わせた。
後は、フライパンで薄く焼くだけである。
ガレットの見た目はクレープと変わりないけれど、蕎麦粉を使ったものは「ガレット」と呼び分けられている。
なんでも、ガレットの「ガレ」は石を意味しており、ガレットの誕生秘話にちなんだ名前だと言う。
以前、ガレット専門店で目にしたガレットの歴史なのだけれど、ガレットはフランス生まれだという。
いつの時代に生まれたものだったのかは覚えていないのだけれど、始まりは意外と古く、当時、太陽光によって熱々に焼かれていた石の上に、蕎麦粉で作ったお粥をこぼしてしまったことが始まりなのだとか。
熱々の石の上で、一瞬にして焼きあげられた蕎麦粥は香ばしい香りを放っていたのだろう。
蕎麦粥をこぼした女性は焼けた蕎麦粥を食べたことからガレットが生まれたそうだ。
宮廷メニューにも加えられたという当時のガレットは、蕎麦粉に塩と水を加えて焼くだけのシンプルなものだったようなのだけれど、後に、蕎麦粉の代わりに小麦粉を使い、更に卵やお砂糖、牛乳などが加えられた生地も登場し、私たちも良く知るクレープが生まれたようだ。
ガレットは、合わせる具材によってスイーツとしても軽食としても楽しむことができる上に、主材料がお蕎麦でできているため栄養価が高く、摂取し難い良質なたんぱく質も摂ることができるという特徴がある。
だから、通常のお蕎麦に飽きたときや、私のようにうっかり茹ですぎてしまったときなどにも重宝するメニューだ。
フルーツやクリームで洋風ガレットに仕上げても良いけれど、餡子やアイスクリーム、黒蜜などを使った和風ガレットも良い。
と言っておきながら、私の好みはサラダやハムなどを乗せたお食事ガレットである。
ガレットが生まれるきっかけとなった蕎麦粥なるものを、私は未だ口にしたことがなく、密かに気になっているのだけれど、こちらもまた素朴で美味しいに違いないと思うこの頃である。
ガレットやお蕎麦を召し上がる機会がありました折には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
そして、自宅でも簡単に作ることができるヘルシーガレット。
アレルギーなどがなく、ご興味ありましたらホームメイドにトライしてみてはいかがでしょうか。
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