夏が本気を出し始めたばかりだというのに、暦の上では、そろそろ立秋期間に入るそうだ。
(※2020年の立秋期間は8月7日から22日まで)
そう他人事のように思ってしまうのは、私自身が季節の移り変わりに付いていけていないからだろうと、幾つかの予定を手帳に書き込みながら思った。
梅雨が明けたと言われれば強い「夏」を感じるし、立秋だと言われれば室内に届く日射しが、どことなく秋色に染まり始めたような気がしたりもして、今年はいつも以上に季節感が落ち着かない。
しかし、大人はそうも言っていられず、立秋は、大人のお作法で行うご挨拶を「暑中お見舞い」から「残暑お見舞い」に切り替えるタイミングである。
会話の中に何気なく盛り込む「暑さが厳しい」というフレーズも「残暑が厳しい」というフレーズに切り替えを。
体感している季節と季節感の足並みを、先人たちが残してくれたあれやこれやに触れながら、擦り合わせつつ味わう季節の狭間も悪くないように思う。
現実は、一歩外に出れば、肌表面をじりっと焼かれるような日射しが降り注ぎ、耳に意識を向ければ、蝉の鳴き声シャワーが降り注ぐ。
「いやいや、夏、真っ只中じゃないか」と思い直すのだけれど、半ば強引に秋を意識させられることでより強く感じられる夏や感じておきたい夏に気付かされたりもして、このような感じもまた、この季節ならではのものなのかもしれない。
そのようなことを思いながら手帳を捲っていると、外からアロハ・オエのメロディーが聞こえてきた。
アロハ・オエ。
ハワイを代表する曲で、日本でもハワイや南国、夏を演出する際に使われているポピュラーな曲である。
その曲が突然、大音量で聞こえてきたのだけれど、何事だろうという気持ちよりも「嗚呼、夏」という気持ちが勝り、作業の手を止めて一息入れることにした。
冷凍庫から取り出したシャーベットをスプーンで崩しながらアロハ・オエをBGMに南国気分である。
美しく、ゆったりとしたメロディーを聴いていると、リラックスして優しい気持ちになれるのだけれど、このメロディーには歌詞があり、恋人たちの別れを歌った曲だと言われている。
作詞は、当時のハワイ王国の女王様が過去に目にした光景を元に作詞したのではないかという話だ。
その一方で、この女王様がハワイ王国最後の女王様となった背景から、無くなってしまうハワイ王国のことを恋人たちの別れに重ねているのではないかと解釈する方もいるという。
どちらにしても別れの曲であることには変わりないのだけれど、内容や背景を知る前に、楽しい雰囲気やリラックス感を得られる場でたっぷりと耳にしてきたからなのか、私の気分はゆるゆると解れていく傾向にある。
それでも、かつて存在していたハワイ王国のことを知るキッカケとなった曲でもあり、耳にする時々で、感じることが変わる不思議な曲である。
アロハ・オエを耳にする機会がありました折には、別れのシーンが綴られた歌詞があるということもチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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