暑い夏は見ためも味も涼やかなものに手が伸びますね。
数年前のこの時期に贈り物でいただいたことがきっかけでファンになった
有職菓子御調進所 老松の『夏柑糖-なつかんとう』と『晩柑-ばんかん』。
以降、私にとって夏の楽しみの一つになっております。
大きな果実の中身は一見、ゼリーのように見えるのですが、
夏柑糖は夏蜜柑果汁、晩柑はグレープフルーツ果汁を寒天と合わせて
果肉をくり抜いた後の皮を器にし、その中へ流し込み固められた寒天のお菓子です。
夏柑糖は爽やかな夏蜜柑の香りと蜜柑果汁がギュッと濃縮されたような甘さが
口の中に広がります。
食感は寒天ですのでゼリー特有のぷるんとした柔らかさはありませんが、
固いわけではなく、程よい固さと滑らかな口当りから
寒天だと言われなければゼリーだと思って食べてしまうような食感です。
グレープフルーツは爽やかな香りと、その奥に感じられる苦みがアクセント。
苦みとは言っても顔をしかめてしまうような苦みではなく、
グレープフルーツのさっぱりとした甘さを引き立ててくれるような上品な苦みです。
夏柑糖よりは甘さは控えめに感じられますが、
グレープフルーツの爽やかさも癖になります。
食感は、こちらも寒天で作られておりまして夏柑糖と同じく程よい固さと滑らかな口当たりです。
この夏柑糖は、戦後の物がない時代に、
老松の方のお庭にあった夏蜜柑の果実に少量のお砂糖と寒天を合わせて、
お客様方のためにお作りしたのが始まりなのだそう。
当時、日本原産種の酸性度の高い夏蜜柑の果汁を寒天で固めることはとても難しく、
約20年前までは、唯一の蜜柑の寒天菓子だったようで
夏柑糖は当時から今に至るまで多くの方々に愛され続けているお菓子です。
一時期は、グレープフルーツの輸入自由化等によって、
夏蜜柑は甘夏に作付け転換されたため姿を消しかけていたようなのですが、
老松の方々と原産地である山口県の萩にある生産者の方たちのおかげで
こうして今の私たちが夏柑糖を楽しむことができています。
夏柑糖は、4月~9月までの期間限定のお菓子でこの純粋種の夏蜜柑を使用しています。
とても貴重な夏蜜柑のため夏蜜柑の出来や収穫高によって
夏柑糖の販売期間は毎年異なります。
夏柑糖の販売が終了しますと、グレープフルーツを使った晩柑に変わります。
今年は、その貴重な夏蜜柑が不作だったようで、
今年の夏柑糖は既に販売を終了しており、現在は晩柑を楽しむことができます。
ひと玉がとても大きいので、
切り分けて涼しげな器に盛り付けてお召し上がりください。
見た目も涼やかで上品ですし、
口に運ぶ前から漂う爽やかな香りに胸が高鳴ります。
お子様からご年配の方まで美味しく召し上がっていただけますので
この季節の贈り物や手土産にもおすすめです。
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