日差しの中にも秋が感じられるようになってきましたね。
ふと見上げた空も、数日前よりもまた少しだけ高くなったように感じます。
大きなイベントのない何気ない日々の中にも、こうした昨日とは違う何かが散りばめられています。
それを当たり前と取るか、気付けた変化をしばし感じてみるか、何も感じないまま通り過ぎるのか。
このようなことでさえ、私たちは無意識に自分で選択しているのでしょうね。
そのような事を思いながら手にしたのはキンキンに冷えたグリーンティー。
本日の私の体感温度は夏、のようです。
そして、冷えたグリーンティーのお供にしたのは「おはぎ」。
もち米とうるち米を混ぜてふっくらと炊き上げて小ぶりに丸めたものを、ぷっくりとした小豆で作られた甘さ控えめの粒あんで包んだ、皆さんもご存知のあれです。
お彼岸の時期の定番の「おはぎ」は、少しフライングのような気もするのだけれど、ここにも既に秋の気配在りき、といったところです。
秋のお彼岸や春のお彼岸の頃に目にする「おはぎ」と「ぼたもち」。
名前が違うけれど、いったい何が違うのかしら?
と思われたことはありませんか?
基本的には「おはぎ」も「ぼたもち」も同じ食べ物で、違いと言えば食べる時期と、こしあんか、粒あんか。
あと、お菓子の形状くらいです。
今は「おはぎ」の名で一年を通して食べることができますので、簡単に手に入るようになった現代人からすると、2つも呼び名があるなんて紛らわしいと感じてしまうお菓子ですが、この名前には古の時代背景や季節を楽しむ気持ちが詰まっておりました。
今回は、その辺りのお話を少々。
お気づきの方もいらっしゃると思うのですが、「おはぎ」は「お萩」と書き、「ぼたもち」は「牡丹餅」と書きます。
ですから、艶やかな牡丹の花が咲く春に食べるこのお菓子を「ぼたもち」と呼び、牡丹の花をイメージして大きくて丸く、豪華に見えるように作られます。
ちなみに、牡丹の花はこのようなお花です。
そして、控えめで品のある小ぶりな萩の花が咲く秋に食べるこのお菓子は「おはぎ」と呼びます。
「おはぎ」の元になっている萩の花は、秋の七草のひとつでもあり、小ぶりで少し細長い形をしています。
ですから、「おはぎ」は「ぼたもち」と比べると少し小さいサイズで俵型に作られます。
萩の花はこのようなお花です。
そして、「こしあん」と「粒あん」にも季節が関係しています。
秋は、小豆の収穫の時期ですので新鮮で柔らかいお豆をあんにします。
もちろん小豆の皮も柔らかいため皮も一緒に楽しめる「粒あん」を使って「おはぎ」を作ります。
春は、秋に収穫した小豆を保存しておいたものを使います。
当然、時間が経った分、皮は固くなっておりますので食感がよろしくないということで、春の「ぼたもち」に使うあんは、皮を取り除いて中のほくほくした部分のみを使って作った「こしあん」になりました。
私たちは年中、状態の良い小豆を手に入れることができるため、こしあんも粒あんも年中、好みや気分で楽しむことができます。
ですから、「ぼたもち」には「こしあん」、「おはぎ」には「粒あん」。
と言われてもピンと来ず紛らわしいと感じるのかもしれませんね。
だけれども、こうして名前の由来を知ってみると、紛らわしいとは感じなくなるのではないでしょうか。
小豆の赤い色には邪気祓いや災厄除けの力があると言われております。
そして、この時期の「おはぎ」や春の「ぼたもち」にはご先祖様の供養の意味もあります。
お嫌いでなければ、ご先祖様に思いを馳せつつ、邪気祓いや災厄除けもちょっぴり期待しつつ、美味しく召し上がってみてはいかがでしょうか。
いつでも好きなものを口にできることもとても幸せなことなので手放せませんが、
秋には「粒あん」の「おはぎ」を、春には「こしあん」の「ぼたもち」を季節の風と共にいただくのも趣があっていいですね。
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