これって本当なの?
友人が私に送ってきた動画には、
日傘を差しながらスクランブル交差点を行き交う女性たちの姿が収められていた。
友人の母親が初めての日本を旅行中とのことだったのだけれども、
彼女の母親にとって、一番の驚きは日傘を差す日本人女性たちの姿だったようだ。
驚きを抑えきれないといった文面に添えられた動画に、彼女も同感したのだろう。
私宛のメールの文面には彼女の驚きもトッピングされていたように思う。
私は、日傘を差すと荷物が増えてしまう上に、
どこかに忘れてきてしまうことが多いため、日傘は使わずに夏を乗り切っている。
だけれども、本来は使いたいと頭の片隅で思っているので、そのように返すと、
友人からは「信じられない、おかしい」と返ってきた。
外国人が日本で驚くことの一つに、「日傘を差す光景」があるのだそう。
日本では当たり前の光景だけれども、外国では不審者扱いされることもあるという。
私は荷物を増やしたくないため、日傘だけでなく、雨傘もあまり使わない傾向にある。
子どもの頃から、このようなタイプだったこともあり、
外国暮らしの間も、
傘に関する習慣や文化の行き違いを大きく感じることはなかったのだろうと思っている。
そのようなことを思っていると友人からのメールが届いた。
「帽子を被り、パーティーでもないのにロンググローブを着け、日傘を差すなんて、
不審者以外の何者でもない」と。
そこまで否定するようなことではないと思うのだけれども、
彼女が自国の習慣や文化を通して見た日本の日傘事情、日焼け防止事情は、
これほどまでにインパクトを与えたのだと知った瞬間だった。
そう言えば、日本は傘の消費量が世界一だというニュースを
見聞きしたことがあった気がするのだけれど、
きっと、傘を差す文化と傘を差さない文化によって表れた結果なのだろうと勝手に推測した。
どのような「当たり前」も少し角度を変えてれば「当たり前」ではなくなるのかもしれない。
その時の彼女とのやり取りは一段落し、
そのやり取りの内容もすっかり忘れた頃、再びメールが届いた。
帰国した彼女の母親が日傘や日焼け防止のロンググローブを購入しており、
それを自国でも使うと言い出し、大変なのだとか。
話を聴けば、彼女の母親は日本滞在中に、どうして日傘を使うのか。
日焼け防止のロング手袋を使うのか。
ショッピングの最中に店員に何度か尋ねたのだそう。
すると、紫外線を防止することができるため美肌でいることができるだとか、
熱中症を予防することができるだとか、
皮膚ガンを予防することができる、など魅力的なことを耳にし、
試しに手頃なものを買い揃え、実際に日本人に混じって日傘スタイルを体験したのだそう。
これが想像していた以上に快適だったようで自国でも使いたいと言い出し、
「不審者扱いをされてしまうから止めてくれ」と家族皆で猛反対しているのだという。
なんて柔軟な思考回路と行動力をお持ちのお母様なのだろう、
私はそのように思い、本人が使いたいのであれば使えば良いのでは?と
入力した文字をゆっくりと削除した。
これはきっと、私が日本文化は肌に馴染んでいるからなのだろう。
この日傘文化と共に、傘を作る過程の様々な技術が世界に羽ばたく日も
すぐ近くまで来ているのかもしれない。