ヨーロッパ旅行から帰国した友人が、空港に到着するなり1通のメールを送ってきた。
旅の土産話か何かだろうと思いメールを開くと、
そこには、「外国人が言うコケシドールって、あのコケシのこと?」とだけあった。
単刀直入、猪突猛進タイプの友人らしい、無駄がない文面に相変わらずだと思った。
私も「そうだと思う」とだけ返した。
そのようなやり取りをしたことすら忘れかけていた頃、
『コケシドール』とタイトルに入れられたメールが届いた。
友人の話によると、旅行中にとてもお世話になった方がいて、
日本に帰ってから何かお礼をしたいから、日本のもので欲しいものはなか聞いてみたところ
コケシドールをリクエストされたというのだ。
友人は、お世話になった方が本当にあの私たちがよく知る「こけし」を欲しているのか、
クラシカルな「こけし」を贈っても良いものかと不安に思い相談してきたのだ。
国民性から考えて欲しくないものを欲しいという確率は低いだろうから、
コケシドールは真のリクエストだろうということ。
発端は分からないのだけれども、
数年前から海外では日本の「こけし」が人気だということを見聞きしたことがあるため、
その方もコケシドールブームに乗っているのだろうということなどを伝えることにした。
実は、このコケシドールブームは海外だけではなく、ひっそりと日本でも起こっており、
「こけし」好きである女性たちを「こけ女」などと言うらしいのだ。
そして、日本へ来る外国人観光客の口コミやSNS上などでクールジャパンの名と共に
日本の伝統工芸品が認められるようになってきているけれど「こけし」もその中のひとつで、
海外で人気が出ているという。
年に2回パリで開かれるメゾン・エ・オブジェというインテリア業界のイベントがあるのだけれど、
ここでも日本のコケシドールが人気だったと言うところを見ると、
職人技によって生み出された滑らかな木の手触りやぬくもりは、
北欧、スウェーデンのダーラナホースやロシアのマトリョーシカに通じるものがあるのかもしれない。
「こけし」は、江戸時代後期頃、
東北地方にある温泉地で、子どものためのお土産物として生まれたといわれている。
円柱の胴体の上に大きめの丸い頭が乗せられたもので、
どれも同じに様に見えるけれど職人による手作りということもあり、
髪型や表情、その他のデザインが異なる点も魅了のひとつだ。
そして、この「こけし」は様々な地域で作られているのだけれど、いくつかの系統に分かれており、
系統をみればどの地域の流れを汲んだ「こけし」なのか判断することもできるという。
コケシドールと一口に言っても系統がある上に、
動物の顔をしたものや、様々なキャラクターがこけし化したもの、
その他、雑貨のモチーフとしても使われてもおり、
クラシカルなものから現代アレンジが加えられたものまである時代。
友人には、色々なコケシドールを見た上で選び、
コケシの歴史なども添え伝えて差し上げれば、
異文化に深く触れることができ喜ばれるのではないだろうか、というようなことを返した。
私自身も友人がお世話になった方と友人のおかげで、
コケシドールの知識をまた少し深められたような気がしている。
そして、自分以外の方の目を借りることで自国文化を知り、
見つめなおすこともできるのだなと思ったりも。
コケシドールを目にする機会がありましたら、
今回のお話をちらり思い出していただけましたら幸いです。
関連記事: