秋刀魚の塩焼きを味わっていたときのこと。
ふと、さかなクンのように、豊富な魚の知識を持った方がいたことを思い出した。
その方とは仕事をご一緒したのだけれど、彼が使っていたPC画面には、
初めて目にするような魚の画像が壁紙として使われていたし、
ペンケースには魚を模した可愛らしいピンバッジが付いていた。
更に、カバンから取り出されたクリアファイルも魚柄だったこともあり、
お魚、お好きなんですか?と尋ねてしまったのだ。
尋ねたことを若干後悔するような表現になってしまったのは、それから1週間ほどだったと思う。
毎日のように様々な魚の話を聞くことになったからである。
そのような話は嫌いではないし、今思えば貴重なお話ばかりだったと思うのだけれども、
マニアックなお魚の、マニアックな生態は、お魚初心者の私にとって難易度の高いものであった。
だから、最後の方はマニアックな世界を覗かせてもらえて良かった。
次に誰かとお魚の話をするときになって初めて、この日の知識が日の目を見るのだろう。
そのような呪文を頭の中で唱えていたように思う。
それから随分と年月が経っているのだけれど、その時に得た知識は日の目を見る機会がないまま、
未だ、私の脳内のどこかにひっそりと眠っているようだ。
ただ、1つだけ、しっかりと覚えている話がある。
それは、秋刀魚には胃が無いという話だ。
正確には、秋刀魚の胃は未発達で、胃と腸が一体化した長い消化器官を持っており、
秋刀魚は、無胃魚(むいぎょ)と呼ばれるものに分類されているのだそう。
秋刀魚の内臓(わた)が、他の魚のそれよりも食べやすいと言われているのは、
胃が無く、食事から排泄までの時間が30分程度と非常に短いため、内蔵(わた)にえぐみがないことが理由なのだそう。
しっかりと胃が発達している魚と消化時間を比べると、その差は10時間以上と言うから、
通常の魚は、内臓(わた)に内臓特有のにおいが定着しやすいようだ。
私は、このとき初めて胃を持たない魚がいることを知った。
そして、魚を扱いながら内臓特有のにおいを感じたときには、
この魚が頑張って食べたものを消化してきた証なのかと思うと、
厄介だと思っていた気持ちが、少しだけ和らぐような気がしている。
秋刀魚には血液をサラサラにし、動脈硬化や血栓、脳梗塞や心筋梗塞を予防したり、
脳や神経を健やかに保つEPAやDHAが豊富に含まれている。
更に、貧血を予防するビタミンB2も他の魚よりも豊富で、
老若男女問わず嬉しい効果を運んでくれる食材です。
この嬉しい効果ももたらす栄養素の多くは、秋刀魚の脂や内臓に含まれているそうなので、
調理する際には、栄養が詰まった脂を落とし過ぎず、
お嫌いでなければ内蔵お味見してみてはいかがでしょうか。
大根おろしやレモンを添えれば、更に素敵なひと皿ですね。
秋刀魚を召し上がる機会がありましたら、
今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
関連記事:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/