幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

旅人の喜びを願いながら変身する花。

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至る所で咲いている紫陽花を目で追いながら歩いていると、テッセンを見つけた。

テッセンという呼び名よりもクレマチスと呼んだ方が耳慣れている方が多いだろうか。

クレマチスは数百種以上もの品種があり開花時期も品種によって異なるため、一年中、どれかが咲いているというちょっと不思議な花である。

その数百種の中には、中国産のテッセンと呼ばれているものや日本産のカザグルマと呼ばれているものなどがある。

クレマチスという名の語源は、ツルを意味する言葉だと言われているのだけれど、ヨーロッパでは、このツルのことを悪魔の糸と呼んでいる人もおり、とても丈夫なツルだ。

そして、丈夫なツルを持っていることからイギリスでは「ツル界の女王」という異名もあった。

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クレマチスの不思議は、これだけに留まらない。

可愛らしい花を咲かせ花びらが散った後のクレマチスは、雌蕊が成長しながら丸まっていき、テッセンシードと呼ばれる状態になる。

テッセンは鉄線と書き記すのだけれど、テッセンシードの見た目はその名の通り、鉄線をクルクルと丸めたような形状をしており、花のときとは違う美しさを見せてくれるのだ。

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その日私が紫陽花の側で見つけたテッセンは、まさにこのテッセンシード。

花の状態で咲いていたならば、私は紫陽花に気を取られて、その花がクレマチスであることにすら気が付かなかったように思う。

決して華やか色をしている訳でも形をしている訳でもないのだけれど、凛としたクールな艶やかさを感じさせる存在だ。

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私がクレマチスという花の存在を知ったのはイギリスに住んでいた時だ。

小旅行でお世話になるお宿に、高い確率でクレマチスが飾られていたことがあった。

花の名を尋ねる度にクレマチスという名が返ってくることから、とても種類豊富な花なのだと知った。

しかし、他にも美しい季節の花があるというのに、どうしてこうもクレマチスばかりなのだろうかと不思議に思い尋ねると、

ヨーロッパでは古より、旅行客がゆっくりと寛ぐことができますように、安心して疲れを取ってもらえますうようにという思いを込めて、お宿のエントランスにクレマチスをツルごと飾る風習があるのだと教えていただいた。

このクレマチスの風習は、マリア様がキリストと一緒に旅をしていた際、クレマチスの美しさに見惚れて、その場で休憩したという話がもとになっており、

この話が、クレマチスの花言葉であるトラベラーズジョイ(旅人の喜び)の由来にもなっているそうだ。

その後、随分と年月が経ってからテッセンシードの名の通り、花とは異なる美しさも持っていることを知ったのだけれど、

フラワーショップ以外で、テッセンシードの名が似合う状態に変身したクレマチスを目にすると、クレマチスのもうひとつの顔を見たようでドキリとしてしまうのだ。

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いつだって花盛り、素敵である。

クレマチスを飾る機会がありました際には、花が散った後の変身した姿もご堪能あれ。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/