最近、溜め込んでしまいがちな資料やデータの断捨離に精を出している。
今の自分にそぐわないものや、十分学ばせてもらったもの、
いつの間にか自分の一部になって馴染んでしまっているものなどが入り乱れており、
それらをひと眺めし、処分していると様々な懐かしさが脳裏を過ぎる。
やっとここまで来ることができたなのか、まだここなのか、随分と遠くまで来ることができたなのか。
感じ方も様々で、感傷的になることもあるけれど、
それ以上に感じられる清々しさがあり、
また新しい何かに触れられると思うとワクワクする時間でもある。
手に取ったのはマットな赤色の表紙が気に入っている一冊のファイル。
最近、全く目を通すことがなくなったけれど、
その中には海外で教えていただいたレシピが詰まっていた。
既に私の常になっているもの、アレンジを加えてマイレシピが完成したものもあり、
過ぎた月日を感じたりもした。
ふと、目に留まったのは本場フランス、マルセイユ名物のブイヤベースのレシピ。
ノートの端に友人の落書きが残っており、当時の出来事が久しぶりに蘇った。
ブイヤベースは、もとはフランスの漁師料理で、魚介類を香味野菜と煮込んだもののこと。
新鮮な魚介類が手に入りやすい南フランス、特にマルセイユの名物料理で、
世界三大スープのひとつとされている。
以前、ポトフのお話をさせていただいたことがあるのだけれど、
このブイヤベースも、まずは前菜としてスープのみを器に盛り付けていただく。
その際、揚げたフランスパンにルイユという唐辛子とニンニク入りのソースを塗り、
ブイヤベースに浮かべて食べるのが本来の食べ方なのだそう。
次に、スープの中に入っていた魚介類とお野菜が別皿で登場し、
メイン料理として、スープと具材を一緒に味わう。
一緒に盛り付けてしまえばいいのに、とこの時も思ったけれど、
ひとつのお鍋で作ったお料理を、丁寧に味わっていく、このスタイルも悪くはないのかも。
と、随分と時間が経ってから思えるようになった。
ブイヤベースをいただくときに欠かせない「ルイユ」というソースは、
とても簡単に作ることができる。
ボウルに、すり下ろしたにんにくと卵黄を入れてかき混ぜ、
ここに少しずつオリーブオイルを加えながら混ぜ合わせていく。
最後に塩、コショウで味を調えたらできあがり。
※余力があれば、マッシュポテト、生クリーム、ブイヨンを加えてコクをプラスするのもおすすめです。
家にある材料を使い、マヨネーズを作るような感覚で作ることができるため、
ご興味ありましたらブイヤベースに自家製「ルイユ」と、
トーストしたフランスパンを添えてみてはいかがでしょうか。
新鮮なお魚や魚介類を見ていると、お刺身やお寿司もいいけれど、
ブイヤベースを食べたい、と思うことがある。
それは、普段の生活の中で、このノートのことを思い出すことは無くなっていたけれど、
あの時食べていた味と記憶が確かに私の中に在るということなのだろう。
そのようなことを思いながら、
既に私の一部になっており見る必要がなくなったブイヤベースとルイユのレシピを
そっとファイルから切り離した。
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