駅の出口へ向かっていると、
すれ違う方々が手にしている傘から雨のしずくが落ちていた。
出入り口から吹き込む空気からは、
体を芯から冷やすような雨ではなく、
どこか優しく温かみを感じる雨だということが感じられ、
季節は確かに春なのだと告げられた気がした。
駅を出てタクシー乗り場を目指すことにしたのだけれど、
立ち止まってロータリーへ視線を向ける私の前を
パッと素敵な傘を広げてさし横切った女性に目を奪われた。
マゼンタカラーをほんの少しくすませたような大人ピンクの傘は、
その場の雰囲気と雨空をも華やかなものに変えた。
残り香ではないけれど、彼女の足取りを追うように傘の残像が脳裏に残った。
そして、目の前の自分の現実に意識が戻ってきたのだけれど、
その時の私の心の声といえば、「(傘かぁ)」だった。
傘に気を配れる女性を大人の女性だと感じる私がいる。
皆さんはどのような傘を使われていますか?
私はお恥ずかしながら、あの何処でも手に入る透明ビニール傘です。
しかも、その数は日に日に増えていく有様です。
過去に、何度も意を決して「それなりの傘」というものを手にしたことがあるのですが、
見事なまでに紛失してしまうのです。
手にした時には大切にしようと思うのだけれども
外出途中に雨が上がれば置き忘れ、次に雨が降るまで気づかない事もありました。
何度も抱く、傘に対しての「申し訳ない」という気持ち。
それ以来、潔く、色香漂わぬお手軽なビニール傘愛用者です。
とは言っても、ビニール傘だからと言って
置き忘れていいという事にはならないのだけれども。
ですから、お手軽傘ではない傘をお持ちの女性を目にすると、
自分の傘を大切に扱うことも大人のたしなみのようにも感じられて
つい「素敵!」と目を奪われてしまいます。
そんな、色香漂わぬお手軽なビニール傘愛用者の私が密かに憧れている傘がある。
日本の傘メーカーの中では老舗中の老舗、『小宮商店』の傘。
傘のために仕立てられた生地は雨傘としてだけでなく日傘としても使える優秀生地。
生地フェチとしては、この辺りもたまらない。
これを熟練の職人さんが手作業で傘にする、スペシャルな一本。
シンプルだけれども番傘(和傘)と洋傘の良いとこ取りをしたようなフォルムは
使うたびに背筋がシャンと伸びるような佇まいだ。
すぐに傘を失くしてしまう私にとっては、
少々勇気がいるお値段でもあるのだけれど
いつかこの小宮商店の傘を大切にお手入れも楽しみながら使うことができるような
女性になりたいと思っている。
皆さんは憧れているものや
いつか使ってみたいと思っているものなどはありますでしょうか。
「いつの日か」
そのような事を思う時間もなかなか良いものですね。
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※音声有りの動画ですので視聴環境にお気を付けくださいませ。
◆みんなが笑顔で過ごせるように、自分にできることを考えてみませんか。