ある日の出来事なのだけれど、
風呂敷を使わなければいけないようなシチュエーションに遭遇した。
使う前に確認をしておこうと思い「風呂敷」をしまっている引き出しを開けた。
粋な好みの柄の風呂敷を集めていた時期があり、
気付けば十分すぎる程の風呂敷があった。
シチュエーションに合ったものはすぐに見つかったので
その他を眺めていたのだけれど
「唐草文様」の風呂敷を眺め、ある出来事を思い出した。
皆さんは「唐草文様」の風呂敷を見て何を連想しますか?
特に上の画像のような緑色の唐草文様です。
きっと、漫画や小説の中に登場する泥棒が
背中に背負っているイメージが浮かぶのではないでしょうか。
実際にこのような唐草文様の風呂敷に
金品を包んで逃げる泥棒に遭遇したことは無いにしても
イメージと言うものは時に現実を軽々と超える力を持っております。
我が家に遊びにきた友人の子どもが
偶然テーブルに置いてあった風呂敷に興味を持ったのです。
ただ、その風呂敷は特別な日に使うようなものであったため、
汚れてもいい普段も使用していない「唐草文様の風呂敷」を遊び道具として渡したのです。
しかし、返ってきた答えは、
「これは泥棒さんが使うのだからやだー」というもの。
唐草文様は縁起の良い文様なんだよ、や、
正式なお祝い事の時には唐草文様の風呂敷を使うんだよ、
などと説明をしたところで通じるはずもなく、
「(まぁね、そのイメージはあるよね)」と思いながら、
女の子が好みそうな華やかな色柄の物を差し出しました。
私の中にも、その子が持っていたような
「泥棒のアイテム」というイメージがあったからこそ、
使いどころを失って放置されていた風呂敷でもありました。
ただ、ここ数年、唐草文様のイメージが変わりつつあるようで、
オリジナル柄やアレンジが加えられた唐草文様が
風呂敷に限らず見直され、再び世の中に受け入れられつつあります。
下の画像のようなアレンジが加えられると素敵な印象に変わりますね。
日本の平安時代には中国から様々な文化や物が日本に伝わってきましたが、
唐草文様もそのひとつ。
蔦は蔓を巻き付け伸ばしながら成長していく強い繁殖力を持っています。
この様子が相手の繁栄を願う気持ちや、
唐草文様の風呂敷で相手をお祝いする気持ちを表すものとして
風呂敷に描かれていました。
そのような縁起のよいもので品物と一緒に、
お祝いの気持ちも包んで(込めて)贈っていたのです。
ですから、昔は唐草文様の風呂敷は多くのご家庭に必ず置いてあるものだったようです。
何でも昔の泥棒は手ぶらで忍び込むと、まずは風呂敷を探したのだそう。
風呂敷は、バッグなどと違って風呂敷は包むものの形を問いません。
ですから泥棒も使い勝手が良かったのでしょうね。
そのように考えると、
唐草文様の風呂敷に泥棒のイメージが付いてしまったことにも頷けます。
相手を敬う気持ちの込められた文様なので、
「そのような事など気にせずオリジナルの唐草文様の風呂敷も使うわ」
と凛とした面持ちで言いたいところなのですが
言い切れない自分の器の小ささに苦笑しつつ
この日も唐草文様の風呂敷を重ねられた風呂敷の一番下にそっと置き、
引き出しを閉めたのでありました。
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