立秋を過ぎたとはいえ、まだまだ体感は夏。
それなのに、街中の所々に表れ始めたハロウィングッズたち。
楽しみがあることや、それを長く楽しめることは嬉しいのだけれど、
今の私にとっての最優先課題は、この酷暑をどう凌ぎ切るかということであり、
正直、ハロウィンの事にまで思考が回らない状態だ。
そうは言っても、今年も、あっという間に秋が来てしまうのだろうなと思っていると、
店頭に並べられていたハロウィングッズの中に、コウモリが土台にデコレーションされている、
なかなか攻めたデザインのスノードームがあった。
両手でひっくり返し、陳列してあったテーブルに置くと、ドームの中で舞っているのは雪ではなく、小さなコウモリだった。
ハロウィンの楽し気な雰囲気に吸い込まれるようにして駆け寄ってきた少年が、
私の横で少しだけ背伸びをして、スノードームを覗き込んだ。
予想していたような、楽し気な雰囲気ではなかったのだろう。
少年は、そのインパクトあるコウモリたちを指さしながら振り返り、
こちらに向かってくる母親に、「これ嫌ーい」と声を上げていた。
私は、その隣に置いてあったキラキラと光るラメが舞う、楽し気なスノードームを少年の視界に入るように置き、その場を離れた。
コウモリは、少年少女たちの中では、暗くて怖いイメージが定着しているのだろうか。
確かに、コウモリが登場するシーンには、不気味さがつきものだけれども、
実は、このコウモリ、縁起物として扱われている。
漢字で表記すると「蝙蝠」なのだけれど、この文字が「福」という字に似ており、
コウモリが逆さにぶら下がるようにして木などにとまることから、
「福が落ちてくる」と言って、中国ではお正月飾りとして古くから大切にされている。
更に、古では位の高い人しか使うことができなかったという、コウモリを使った吉祥文様まである。
こちらは、ひと目見ただけでは、そのモチーフがコウモリだとは気づかないような吉祥文様なのだけれど、
この文様デザインには5匹のコウモリが使われている。
その一匹、一匹に長寿、財運、健康、そして徳を積むことができるようにという意味の好徳、
この世を去る時が来たら、心残りなく安心してこの世を離れることができるようにとう意味の善終、
という意味が込められている。
日本でも、コウモリという発音から、幸せを守ってくれる「幸守り」、
幸せをたくさんもたらしてくれる「幸盛り」と、意味のある文字をあてて、縁起物として扱う方々もいらっしゃる。
彼らからしてみれば、姿形だけで不気味なものとして扱われるのも、
逆に縁起を担がれるのも人間の勝手以外のなにものでもないのだろうけれど。
そのようなことを思った、ある日の午後。
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