今年の七夕も終わってしまったと、
部屋の片隅に活けてある笹に吊るされた短冊を眺めながら思うのも、この時期恒例のこと。
自宅周辺が真っ暗になることがなく24時間灯りが灯っているため、
ベランダに出て夜空を見上げてみても満点の星々には出会えない。
心の目で天の川を想像していたら、長崎堂の「クリスタルボンボン」が恋しくなった。
これは、大阪・心斎橋にある老舗菓子店「長崎堂」の砂糖菓子。
またもや花より団子的思考回路かと自分で思ったけれど、
ピンク、ブルー、ホワイトのパステルカラーの小粒の砂糖菓子が
粒々、ころころしており、夜空に浮かぶ星々のようでとても可愛らしいのです。
小指の爪よりも小さな粒は、ひと粒、ひと粒手作り。
ボンボンはシロップを垂らし表面のお砂糖が固まるのを待ってから、再度シロップを垂らして表面を固めていきます。
金平糖にも似ており、手作りとなるとお砂糖が固まるまでに半日以上かかるため、大量生産が難しいお菓子です。
それぞれ、ピンクは、マラスカという酸味の強いさくらんぼから作られる、
柔らかなお花の香り漂うマラスキーノというお酒のボンボンで、
ブルーは、アニスという薬草で香味を付けられた風味豊かなアニゼット酒のボンボン。
アニスのお酒はアルコールが強くて辛口なのですが、
他の飲み物と混ぜて使うと甘くてふくよかな風味になるため、お菓子作りにもよく使われます。
また、スペインではクリスマスの時期にアニス酒を飲む習慣があります。
これは、クリスマスのご馳走の消化をスムースにするため薬酒としての意味も兼ねています。
白はオレンジの爽やかな香り漂うコアントロー酒のボンボンです。
クリスタルボンボンをひと粒口に含むと舌の上の体温で、シロップを覆っているお砂糖がシャリッ、ほろっと崩れ、
中から甘くて爽やかなシロップが口の中に広がり、甘く優しい香りが鼻から抜けていきます。
強そうなお酒の名前が並びますが、アルコールは優しくほのかに感じられるほどです。
ボンボンはそのまま楽しんでもいいのですが、私は紅茶の中に数粒落としたりもします。
パッケージはレトロで優しい色合いのデザインで、どこか懐かしさが漂います。
箱を開けて中を覗き込むと、夜空の星々を取って詰めたかのような可愛らしさに
女性なら心がポッと熱を持つのではないでしょうか。
出来ることなら年中楽しみたい、と欲張り声をあげたいところなのだけれど、
手間暇がかかるため大量生産ができないことと、
暑さに弱いお菓子ということが理由で、
購入できるのは10月下旬ごろから5月までとなっています。
残念ながらこの時期に手に入れることはできないため、
今年の秋を首を長くして待たなくてはならないのだけれど、
あの優しくて爽やかな大人の甘さを思い返す時間もまた、心にくいのです。
来年こそは計画を立てて、
七夕の日にクリスタルボンボンを楽しみながら天の川を眺めたいなと思います。
気になられた方がいらっしゃいましたら少し気が早いですが、
今年の秋の楽しみに、心の片隅に留め置いてみてはいかがでしょうか。
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