母国語とは言え、いつの間にか間違えて覚えたまま使っている言葉というものは意外にも多いものです。
中には大多数の人が間違えたまま使っているため、
どちらが正しいのかさえ曖昧になってしまっている言葉もあります。
更には「公式使用でないのであればどちらも良しとしましょう」
という扱いの言葉まであるのだから、言葉が歩む人生も色々です。
これは、私が学生の頃に間違えていたことがある言葉です。
例えば、誰かに何かを教えてほしい時や何かを聴きたい時、
その相手が会話を交わすことが難しいほど、非常に忙しい様子だったとします。
これを「取りつく暇もない」だと間違えていたことがあるのです。
正しくは「取りつく島もない」です。
そして、その時私は、この言葉の使い方も間違っていたことに気づかされたのです。
どうして、とりつく「島」なのだと思いますか?
「島」というのは海に出た船から見てみると、とても頼りになる存在です。
その島が無いという事は、頼ることができる場所がないということ。
ここから頼りになるところが無いという意味や、
何かを教えてもらおうとしても相手の態度が冷たいため、
声をかけるきっかけが無いという意味で使われます。
この言葉を忙しく動き回っていてなかなか時間を作ってもらうことができない
学校の先生や職場の上司に対して
「先生(上司)の所へ行ったのだけれども、取りつく島もなくて」と使ったとしたらどうでしょう……。
「先生(上司)って態度が冷たくて声をかけるきっかけがないの。」
「先生(上司)って頼りになるところが無いの。」
と言っていることになります。
ちょっと、ゾゾッとしてしまう間違いだと気づくかと思います。
そして、言葉の意味を知ると、
そもそも、このようなシチュエーションで使う言葉ではないことにも気づかれるのではないでしょうか。
そのまま、「先生(上司)は忙しそうで話しかけるきっかけがなくて」と言った方がスマートですよね。
間違えで使っていた当時の自分を振り返ると今でも恥ずかしい気持ちと
ゾゾッとする気持ちと、
何だか初々しかったな、という気持ちが入り乱れます。
そして、当時、私の間違いを
「僕ってそんなに頼りないかな、結構頑張ってるよ」と
お道化ながら笑顔で指摘してくれた恩師には今でも感謝しています。
皆さんはいかがでしたでしょうか?
言葉の引き出しケアのお役に立てましたのなら幸いです。
大人になると言葉の間違いなどを指摘してくれる方も居なくなりますよね。
だからこそ、と言うと少し大げさですが、
時々、この場で皆さんと一緒に言葉の引き出しの整理をさせていただけたら、と思っております。
いつも、私の失敗談を聞きながらお付き合いしてくださる素敵レディの皆様に感謝です。
ありがとうございます。