幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

異国に古の侍魂があっても良いではないかと思うのです。

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ある神社へ足を運んだときのこと。

前方からお詣りを終えたらしき数人の外国人観光客が歩いてきておりました。

日本を気に入っていて旅を満喫していることは、

彼らが着ている、遠目からでも分かる日本のアニメキャラクターがデザインされたTシャツや

手にしているプラスティック製の刀のおもちゃから見て取れました。

クールジャパンブームではあはるけれど、

プラスティック製の刀のおもちゃに、未だ需要があることに少々驚きつつ彼らとすれ違おうとした時、

彼らの一人が手にしていた刀の先が、私のバッグについていたベルトにスポッとハマったのです。

どうしてでしょうね。

私は妙なアクシデントに遭遇する確率がほんの少し、人より高い気がするのです。

英語圏の方なのか確認出来ぬまま、気にしないで……と発したと同時に、その刀の彼が大声で言ったのです。

「ご無礼をお許し下さい!!!」

そして、腰をきれいに折り曲げ、深々と私に頭を下げたのです。

さすがに私も驚いて、ここは何時代だ?と一瞬たじろぎました。

もしかしたら、若干体が仰け反っていたかもしれません。

周りを歩いていた日本人たちの肩が、

上下に揺れていたのは私の気のせいではないと思うのです。

「大丈夫ですよ」と言いながら私のバッグにぶら下がる、あの刀を引き抜いて彼に渡すと

「私の日本語おかしいですか?」と彼。

きっと、侍アニメが好きで、侍アニメから日本語を学んだのであろうことも

彼のTシャツが語っておりました。

この時の私は、少々急いでおり、細かく説明する時間がなかったこと、

異国に古の侍魂があっても良いではないかと思ったこと、

そして何より、一瞬たじろぎはしたものの、何だか面白いじゃないか。

という非常に個人的な偏った判断で、

彼には申し訳ないのだけれど「問題ないですよ」と笑顔で伝えてその場をあとにしました。

 

日本語は難しいですよね。

無礼、非礼、失礼など礼儀に関する言葉も様々ですものね。

例えばこの3つの言葉、皆さんはどのように使い分けされますか?

まず、私たちは礼儀は当然あるべきものとして認識していますよね。

これを踏まえて3つの言葉を覗いてみましょうか。

 

刀の彼が使った「無礼」という言葉。

これはあるべきはずの「礼」が「無い」わけなので、

うっかりでは済まされないようなお詫びが必要である状態の時に使用する言葉です。

 

そして、そのあるべき「礼」を失った状態が失礼という言葉。

例えば、とても真剣な会話の最中に突然くしゃみが出てしまったとします。

くしゃみで会話を中断させようなどと思っていない、

言わば「礼」がある状態だけれど、

うっかりくしゃみが出て「礼」を失ってしまったわけです。

このような時には「失礼しました」という言葉を使いますよね。

 

また、上司のお部屋へ何かを伝えにいかなくてはいけない状況があるとき、

「失礼します」という言葉を使って入室しますよね。

この「失礼」には、

上司は仕事に集中しているので邪魔をしたくはないという「礼」の気持ちはあるけれど、

敢えて礼を失ったことをしてしまいますがお許ししくださいね、

という前置きのような意味が含まれています。

 

こうして、「無礼」と「失礼」を比べてみると「無礼」は一大事だけれども

「失礼」は「礼」を元にした柔らかなニュアンスの言葉であることが分かります。

さて、最後になった「非礼」は、文字のとおり「礼」に「非ず」。

あったはずの「礼」が無くなったり、欠けたり、失ったりした状態ではなく、

初めから背いている状態を表していますので、

非常に危機的状況であることが想像できます。

 

似たような意味合いをもつ言葉でも

丁寧に観察してみると、各々の言葉に個性が感じられるのではないでしょうか。

使いどころを知っておいたり、抑えておくことも大切だけれども、

刀の彼の様に愛情をもって言葉を使っていると、

言葉が、彼の「日本が好き」という気持ちを運んでくれることもあるのだから、

言葉は不思議でございます。

どのような言葉も愛情ありきで使いたいものです。

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