ご近所に美味しいと評判のインドカレーのお店がある。
お昼も夜も営業前から大勢の人が並んでいたのでずっと気になっていたのだけれど、
徒歩数分程の近距離に在るという妙な安心感から、繁盛っぷりを眺めつつお店の前を通り過ぎる日々を送っていた。
その日もきっと並んでいるのだろうなと思いつつ視線を向けるとお店に入ることができそうな雰囲気。
レッツトライ!そんな声が自分の中から聴こえた気がした。
店内に入ると五感が良い塩梅に刺激されるスパイスの香りが漂っていた。
使い込まれている革張りのメニューを開くとズラリと並ぶカレーのタイトル。
逸る気持ちを落ち着かせる為に、目の前に置かれている氷水をゴクリと口に含んだ。
カレーのお店に限らず、豚肉や牛肉をポークやビーフと記したり呼んだりするけれど、
ちょっとした違和感を抱くこと、ありませんか?
豚肉は「ポーク」と言うけれども豚そのものは「pig(ピッグ)」と呼びますよね。
牛だって「ビーフ」と言うけれど「caw(カウ)」ですし、羊だって鶏だって動物名と食材名が違いますよね。
ある時ふと感じた小さな違和だったけれど、感じたそばから忘れては再度、違和感を抱く。
私はそのようなことをを幾度か繰り返し、やはり気になってしまう自分に苦笑しつつ調べることにしたのです。
そこにはヨーロッパの歴史が潜んでおりました。
今回は、そのようなお話を少し。
このような事が起きている原因は、「動物を食材にし調理した人」と「そのお肉を食べた人」が
異なる言葉でその動物を呼んでいたことにありました。
イギリスはフランスに征服されていた時代があったのですが、
その当時、動物を育て、調理したのは支配されたイングランドのアングロサクソン人、
お肉を食べたのは支配層のフランスのノルマン人という状況が起きました。
ですから、アングロサクソン人(イギリス)の言葉とノルマン人(フランス)の言葉が、
動物の名前として、食材(お肉)の名前として各々定着したようです。
私たちが英語でビーフと呼んでいる牛肉ですが、古いフランス語ではbuef、豚肉はporcと記され呼ばれておりました。
※古語ですので現在のスペルとは少し異なります。
この頃のイギリスにはフランス語が伝わってきていたので、
今も英語には、フランス語が元になっている言葉が沢山残っています。
この状況、日本語の中に中国から伝わった行事や言葉が混ざったまま、
現代にまで受け継がれているものがある、という状況にも似ていると思いませんか。
私たちが英語だと思って、当たり前のように使っている単語の語源はフランス語。
見えない所で、様々なことは繋がっているようでほんの少しだけ、不思議な感じがしてしまいます。
そうそう、冒頭のインドカレーのお店は、
連日大勢の人が並んでいることも頷ける美味しさでございまして、レッツトライ!は大成功でした。
今日も皆さんと、皆さんの大切な方々が心軽やかな1日でありますように☆彡