太陽が辺り一面に溶けだしたかのように、西の空を茜色に染め上げていた。
自然が日々生み出す一期一会の色に胸の奥を鷲掴みにされながら
私は、待ち合わせの場所へと向かっておりました。
その時、今年の金木犀のピークは既に過ぎたような気がしていたのだけれど、
何処からともなく、ふわっと、あの香りが漂ってきたのです。
また来年、そう思っていたものだから何だか得をしたような気分になり
フレッシュな香りを吸いこみました。
その日の香りは私の味覚を刺激したようで、
季節が感じられるお酒を味わいたい、
これから行くお店には桂花陳酒はあるだろうかと小さな期待が顔をのぞかせました。
桂花陳酒は、金木犀の花冠(かかん)を白ワインに漬け込んだお酒のこと。
金木犀の甘い香りを堪能できるため、
何となくこの季節になると口にしたくなるのです。
あの絶世の美女と言われた楊貴妃も好んでいたと言われているお酒としても知られています。
そして、お酒以外にも金木犀はお茶やシロップ、ジャムなどでも楽しまれています
金木犀の強く甘い香りは人の興味を誘うようで
お酒以外にも様々な用途に使うことができるよう研究されておりました。
日本では金木犀と言えばトイレの芳香剤変わりとしてトイレ付近に植えられていたこともあり、
金木犀香る芳香剤の商品化が進んだ時期もあるからでしょうか。
金木犀が香ると花の香りを楽しむ前に
トイレを連想してしまう、苦手な匂いだ、と言う方もいらっしゃいますね。
お花は人が持っている視覚、嗅覚、触覚を同時に刺激し、
時に香りは記憶を呼び起こす不思議なスイッチになることもあります。
一度定着したイメージを払拭するのは簡単ではありませんが、
皆さんは金木犀の香りにどのようなイメージをお持ちでしょうか。
金木犀以外に、お好きな秋の香りはありますか?
好きだと感じる香りや心地よいと感じる香り、ほっとする香りは、
あなたを癒してくれるサインです。
香りも私たちの日常に小さなハッピーをもたらしてくれます。
頑張りすぎている時は意識が香りに向かないことも事もあるものです。
炊き立てごはんの香りでもいいですし、
シャンプーの香りでもいいですし、
香りを感じながら上手にリラックスしてみてはいかがでしょうか。
今回登場した金木犀は、漢方の生薬や精油としても使われております。
効能としては、胃腸を整えてお腹を温めて血流を良くしたり、
気持ちをリラックスさせてストレスを和らげたり、
抗酸化作用やダイエット効果の他にも寝つきを良くしたり、
眼精疲労や低血圧の症状を改善する手助けをしてくれたりと
頼もしいものばかりです。
帰り花となった金木犀がふわり香った時には、
お嫌いでなければ深呼吸をして
金木犀の持っている効果をいただいていてみてはいかがでしょうか。