冬になると暖かい部屋で冷たいアイスクリームを味わいたくなる。
きっと、この温度差を堪能したくなるのだろう。
年に数えるほどしか口にしないのだから、と自分に対する言い訳を用意して
リッチな味わいのものを楽しむ時間がたまらなく好きだ。
そんなの自分の匙加減ひとつじゃないか、楽しみたいだけ楽しめばいいじゃない、と思うのだけれども、
時に、ちょっとした枷がありふれた時間をリッチな時間に変えてくれることもある。
それを知った大人は、自由だけでなく枷だって自分の匙加減で楽しんでしまえるのだ。
そう言えば、飽きもせずに時々読み返している枕草子、
正確には必要に迫られて目を通しているという方が正しいのだけれども、
枕草子にも上流階級の人々がかき氷のようなものを口にしていたことが分かる記述がある。
時代が時代なので、かき氷(削り氷)は「あてなるもの」として記されている。
あてなるもの、というのは上品なものという意味。
他には水晶の数珠や藤の花、なども上品なものとして挙げられている。
この部分を目にするたびに、上品と聞いて食べ物やアクセサリーや植物など様々なジャンルから挙げられる、
無意識の自由さが少しだけ羨ましいと思う。
そのような自由さを持ったあの頃の人たちがこのアイスクリームを口にしたら、どのように表現するのだろうかと。
スプーンですくったアイスクリームを味わいながら想像してみるも
想像が形になるまえに口の中のアイスクリーム同様にあっけなく消えてしまった。
アイスクリームは割と新しい食べ物のようなイメージがあるけれど、
実はとても古くから口にされていた食べ物のひとつです。
古代ローマ人やその支配下にあった地域の人々は、
山にある万年雪や氷を持ち帰っては果汁や牛乳、ハチミツやワインなどをかけたり、
それらを加えてクリーム状にした「ソルベット」というものを楽しんでいたそう。
※ソルベットはイタリア語、英語ではシャーベット、フランス語ではソルベ、日本語ではかき氷(削り氷)
あのシーザーも、アレクサンダー大王もこの「ソルベット」を食べていたといいます。
このソルベットが時代と共に世界中に広がり、
時代や味覚、その土地に合った改良が加えられてジェラートやグラニータ、
私たちが口にしているアイスクリームなどが生まれました。
山の上に降り積もった雪が、濃厚なアイスクリームに変化するまでの道のりは、思っている以上に長かったようです。
このような話を思い出しつつ、今年のスケジュールを頭で追いつつ、
お気に入りのバニラアイスクリームにハチミツを回しかけて味わっていたのだけれど、
久しぶりの美味しさに頭の中はすっかりクリアになっておりました。
あてなるものと言うには少し違和感があるけれど、
暖かいお部屋で自由に食べるアイスクリームもいいものです。
体を労わることも、スケジュールを予定通りにこなすことも大切だけれども、
時にはあなたの気持ちが満たされるような時間を優先してみてくださいませ。
お顔の緊張も解れて不思議と元気が湧いてきますよ。
明日の笑顔のために、今夜は自分へのプチご褒美、いかがですか?
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