幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

お椀の蓋にかけられた呪いは知恵とお作法で回避。

f:id:hiiragi1111:20181004133250j:plain

飛び込みで入った飲食店で、出していただいたお茶を口に運びながらひと息ついていると、

通路を挟んで斜め前方のテーブルに座っている方の手元に目が留まった。

嫌な予感が脳内に登った瞬間、ガシャンという音と一緒に、

お味噌汁が入っていたであろうお椀が宙に浮いた。

素早く駆け付ける店員と、その方のやり取りに視線を送らないよう、自分の手元のお茶に意識を集中していると、私の元にもお膳がは運ばれてきた。

何だろう、この妙な緊張感は。

私の視線は、無意識に目の前のお椀に釘付けになっていた。

私は両手を合わせるや否や、真っ先にお椀の蓋を開け、非常時を回避しておくことにした。

お味噌汁やお吸い物などの汁椀の蓋は、時々、強力な吸盤の如くお椀に張り付いてしまうことがある。

コツは、片方の手でお椀を、もう片方の手では蓋を掴み、

お椀を安定させたところでお椀に添えている手でお椀を挟むようにして軽く圧力をかけ、

お椀と蓋の間に隙間を作り、素早く蓋を持ちあげて外せば良いのだけれど、

そうだとは知っていても、何かの呪いをかけられたのか、うんともすんとも言わないような場面に遭遇することがある。

子どもならいざ知らず、大人である自分がガシャンと最悪の事態を招くことは避けたい場面である。

粗相を絶対に避けなくてはいけない、礼節を重んじる必要があるような席では、

お店の方にお願いする方がスマートだけれども、

「これくらいは自分で」という思いからお願いするタイミングを逃し、焦りが生まれることもある。

f:id:hiiragi1111:20181004133315j:plain

以前、仕事後の会食の席でこのような話題が上ったとき、

この、お椀の中で起きている出来事を分かり易く解説して下さった方がいた。

その方曰く、熱い汁ものはお椀に注がれてから少しずつ温度が下がっている訳だけれども、

温度が上がると膨らんで、温度が下がると萎む性質を持った空気は、

お椀の中で、温度の低下と共に萎み(空気が薄くなり)、

お椀の中を少しずつ真空状態にしているというのだ。

新しい空気が入り込む隙間があれば、真空状態は回避できるけれど、

お椀と蓋に出来た僅かな隙間には、水滴が形を自在に変えてはまり込むため、

より、真空状態を作り出しやすい環境が仕上がっており、

お椀の蓋は、時間が経てば経つほど開きにくくなる仕組みなのだそう。

f:id:hiiragi1111:20181004133333j:plain

お作法としての、お椀を開けるときのコツを掴んでおくのも良いけれど、

お食事の準備が整ったなら、まず先に、「汁物椀の蓋を開けておく」という手も大いにアリ、なのではないかと思っている。

お椀の蓋にかけられた呪いは“知恵とお作法で回避”でございます。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/