窓を開け放った時に外から流れ込む風の匂いに春の匂いが混ざりはじめた。
春の匂いなんて曖昧な表現だけれども
昨日までとは違う柔らかさを含んだ空気を
私の本能は春の匂いだと察知するのだろう。
その日は、寒さも和らいでいたため温かい飲み物と厚手のひざ掛け、
そして1冊の本を手にベランダへ出た。
それらをガーデンテーブルの上に置き、まずは思いっきり深呼吸をする。
吸い込んだ新鮮な空気が体中を巡りながら
体内にあった靄のようなものを一掃してくれるかのように感じて、
いつものように、深呼吸に夢中になった。
寒さも和らいだとはいえ、時折吹く風には冬の冷たさも残っており、
私はすぐに湯気を立ち上らせている飲み物へと手を伸ばした。
最近のお気に入りは香ばしいゴボウ茶だ。
ゴボウ茶が体の中央を温めながら奥へと流れ落ちていくのを感じつつ開いた本は、人間の脳に関する本。
脳を使いながら脳の本を読むなんて、いささか妙な気もするのだけれど、
と今回も思いながらエイッと開いた場所には右脳に関することが記されていた。
私たちは、大人、子どもに関わらず、
退屈だと感じる話を聴いているときは、相手の声を左脳で聴き、
わくわくしているときは、相手の声を右脳で聴いているのだそう。
例えば子どもに読み聴かせをしているときの子どものリアクションや、
朗読などを聴くときのことを想像してみるとよくわかる。
物語の登場人物を演じ分けながら読まれると自然と聴き入ってしまうけれど、
淡々と棒読みするだけのそれでは飽きてしまい他のことに気を取られてしまう。
右脳が刺激されると様々な感動や感情が生まれ五感がしっかりと働くため
情操豊かな時間を過ごすことができるのだそう。
更に私たちの脳は休むということとは無縁で年齢制限なく発達を続けるのだという。
年齢を理由に制限を設けたり、諦めたりしてしまっているのは私たちの方で、
脳の方は、まだまだやれる!そう思って動いているのだ。
冬と春の狭間を行きつ戻りつしながら春へ向かうこの時季は、
心身ともに揺らぎがち。
このような時季こそ、五感を右脳を使ってみたらどうだろう。
本を読むもよし、久しぶりに雑誌を捲ってみるもよし、
懐かしい音楽に触れてみるのも、映画を観るのもいい。
ドラマを楽しみに加えてみたり、
日常の中に体が気持ちいいと感じるストレッチをひとつ加えてみる。
美味しそうな香りに誘われるがまま夕食のメニューを決めてみたり、
まだ試したことのないファッションアイテムやカラーにトライしてみるのもいい。
冬の寒さでちょっぴり縮こまっている右脳を、五感を、春の息吹と一緒に目覚めさせてみませんか。
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