オーガニック食材などを専門に扱っているショップの前を通り過ぎようとしたとき、おしゃれな黒板風の看板に、「バジルの季節ももうすぐ終わります」とあった。
気まぐれでバジル栽培をしていた時期もあったけれど、思っているよりも手軽に手に入るバジルということもあり、いつの間にか購入専門派に落ち着いていた。
ハウス栽培のものなどは秋が来ようが冬がやって来ようが、スーパーで購入できるけれど、旬が終わると知って思わず店内に足を踏み入れた。
大きな袋にたっぷり詰めらたバジルの葉が積まれていて、道の駅などで取り扱われているような、豪快な雰囲気を醸し出していた。
バジルのそばへと近づけば、爽やかさの奥に、ほのかに感じる甘い香り。
バジル好きにはたまらない香りである。
通常販売されているバジルの葉よりも大きく成長した葉が大量に混ざっている所をみるに、露地栽培もののバジル最後の収穫物といったところだろう。
それならば、もう少し今年の露地栽培もののバジルを自宅で楽しめるよう、ひと手間加えるかと、大きな袋をひとつ、手に取った。
バジルの保存方法は色々とある。
私はその時の気分でバジルの葉を塩漬けにしたり、ニンニクや鷹の爪と一緒にオイルに漬け込んだり、バターに練り込んだりするのだけれど、今回は一番ラクな乾燥バジルで保存することに。
きれいに洗ったら、水分を拭き取って、キッチンペーパーを広げたお皿の上に葉っぱが重ならないように広げ、500Wから600Wで1分から1分30秒ほど加熱して乾燥バジルに。
これをフードプロセッサーで好みの大きさに粉砕して小瓶に移し替えたら出来上がり。
フードプロセッサーを使わずに、ビニール袋の中に入れてワシャワシャと手で揉み砕いてもいいし、すり鉢で擦ってもいいし、この辺りは自分が感じるラクを選べばよいので、お手軽である。
脳内シュミレーションも出来たところで、バジルの袋を手に店内を見回っていると、売り物ではない鉢植えのバジルに白くてかわいい花が咲いていた。
店員の話によると、バジルはかわいい花を咲かせるけれど、花が咲くと栄養を花に使われて葉が硬くなってしまうこともあり、蕾の段階で直ぐに摘み取られるのだとか。
だから、バジルの花を見たことがない方も多いのではないだろうかという思いから、今年は一鉢、蕾を切り取らずに鑑賞用に育てたのだそう。
バジルの花は一斉に開花するのではなく一段ずつ咲いていくそうで、眺めていると、その咲き方までも可愛いと感じるようになるのよと、隠しきれない興奮を漂わせながら仰った。
私も大勢の中の一人に漏れず、バジルの花を目にしたのは、このときが初めてだったように思う。
最近、目にした話題に、「香草の価値は、花を咲かせた状態で出荷する方が通常の倍に跳ね上がる。」というものがあった。
ありそうで無かった、食事を五感の全てを使って味わう日本人ならではの新しい視点だと感じたのだけれど、確かに、バジルの葉を使ったカプレーゼの盛り付けに、ちょこんと白いバジルの花が添えられていたら、お皿の中の華やかさはグッと増すように思う。
咲くことを許されなかったバジルにも、新しい自由がやってくるのかもしれないと思ったりもした。
この時季、収穫を終えて放置されたままのバジルを目にする機会がありましたら、少し目を止めて白い花を観察してみてはいかがでしょう。
爽やかで可愛らしい花が、残暑の熱を和らげてくれるかもしれません。
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