何となくテレビを眺めていたら、美味しそうな四川料理の紹介が始まった。
あの食欲をそそられる真っ赤な色に視線が釘付けになった。
以前住んでいたところは歩いて2分ほどの場所に本格的な四川料理のお店があった。
家で作る四川料理もいいけれど、本場の方が作るそれとは、やはり微妙に異なるのだ。
微妙なそれこそが技であり、文化であり、リアルな味なのだと思う。
だから、本場の辛さを存分に味わいたいときに頼りにしていたお店だ。
私は激辛好きというほどではないのだけれど、ある程度の辛い物であればいける口。
このようなタイプは、時々、辛い物を欲することがあるように思うのだけれども皆さんはどうだろうか。
海外で生活をしていると日本食も恋しくはなるのだけれど、
どういうわけだか辛いものを欲することがある。
私の場合は、フランス滞在中、その傾向が少々強かったように思う。
朝からクロワッサンを口にし、ランチのあとのデザートタイムには極甘スイーツが登場する。
小腹が空いたティータイムにホットチョコレートのおともにザッハトルテを注文する友人を見て、
色んな意味で「おぉ~」と声が漏れたこともあった。
※ザッハトルテとは、オーストリアの伝統的なチョコレートケーキの一種でウィーンにあるホテル・ザッハーの名物菓子。
もちろん、甘いものも美味しいし、文化だということも理解してはいるのだけれど、
私には刺激が必要だったようだ。
だから、友人たちに美味しい四川料理を食べに行こうと提案した。
少しだけ妙な空気が漂った気がしたのだけれれど、友人たちは快く提案に乗ってくれた。
しかし、この後思いもよらなかったことに気付いたのだ。
フランス人は辛い物に不慣れだということ。
辛さの中に旨みや甘みを感じられる味覚は誰にでも備わっているものではないということ。
数人での食事会だったのだけれど、私ともう一人を除いた全員がお腹を壊してしまったのだ。
辛いだけで美味しさまでは分からないと言われた時には、
申し訳なかったという気持ちと共に
フランス人の辛さの認識や感じ方通して文化を知ったような気がした。
その日は四川料理の後に、お口直しだと言って連れて行かれたのは
脳のてっぺんを突き破られるのではないかというくらい極甘のスイーツ店だった。
「こういうことか」と笑うと、「そういうことよ」と笑われた。
そのことがあってから、フランスでの食事を観察するようになったのだけれども、
確かに辛いものに出会う頻度は低い。
辛い物と言えば?と問えば、マスタードやブラックペッパーをはじめとするコショウの名が上がる。
健康ブームの影響もあってワサビを口にする人が増えているけれど、
ダイエットや疲労回復に効くと聞けば唐辛子にも注目が集まるのだろうか。
いや、このハードルは想像以上に高いだろうな。
そのようなことを思いながらテレビの中の四川料理を目で追った。