自宅から駅までは歩いてすぐの距離なのだけれども、
その日は真夏を思わせるような日差しを避けたくてバスに乗った。
後ろから何番目かの空いた席に腰かけた。
背後には5、6人の小学生たちが座っていたのだけれど、
彼らのトークに度々登場する「ひゃくようそう」という言葉の正体が
気になって気になって仕方がなかった。
手元のスマートフォンで調べてしまえば早いのだけれども、
何となく聞き覚えのある言葉だったため、
自分のシナプスを励ましつつ「ひゃくようそう」の記憶の尻尾を掴もうと
彼らの会話の中にヒントを探していた。
皆さんは「ひゃくようそう」と聞いて、その正体を思い出すことができますでしょうか。
今回は、そのようなお話を少し、と思っております。
「ひゃくようそう」って何だったかしら?
「ひゃくようそう」って何かしら?
と思われた方は、柊希の脳内整理にお付き合いいただけましたら幸いです。
結局わたくし、彼らがバスを降りた後も記憶の尻尾を捕まえることができず、
その夜、小さな敗北感を胸にスマートフォンに「ひゃくようそう」と呟きました。
出てきた文字は「百葉箱」。
「ひゃくようばこ」と読んでも間違いではないようだけれども、
広辞苑には「ひゃくようそう」と記されていることから正式名称は「ひゃくようそう」とのこと。
今では設置している小学校も減ってきているようだけれども、
百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)というものは、
小学校の校庭に設置してある小さくて白い、箱のような、鶏の巣箱のようなもののことでした。
この白い箱の中の中身はと言いますと、
温度計と、温度と湿度を同時に測定することができる乾湿計と呼ばれるもの、
この2つが入れられており、
この2つの数値から正確な気温を導き出すことができるのだそう。
このことから、小学校の理科の授業で使用されることがあるようなのですが、
皆さんは使ったことがありますでしょうか。
私は、そのように言われれば、そのようなものがあったような気もするのですが、
遠い記憶の中に、はっきりとした
百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)の尻尾を見つけることはできませんでした。
それにしても、どうして百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)という名前なのか。
何となく気になりまして名前の由来を追ってみたところ、
この「百葉」という言葉は、もとは中国の言葉で牛や羊の「胃袋」を意味するのだとか。
突拍子もない言葉を名前にしたものだと思ってしまったのですが、
百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)の姿に理由がありました。
百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)は、このようなものなのですが、
扉や壁の面に段がつけられています。
中国では、この構造に似た牛や羊の胃袋を百葉と表すのだとか。
このようなことが由来となり、
この構造を使った箱のことを百葉箱(ひゃくようばこ/ひゃくようそう)と
呼ぶようになったといいます。
何でも知った気になっていると、
知らないことや忘れていることが、どこからともなく舞い込んでくることがあります。
オトナタチが知らないことや忘れてしまったことはコドモタチが、
コドモタチが知らないことはオトナタチが、知っているのかもしれませんね。
持ちつ持たれつ、ここに在り。