自分の手に負えなくなってしまった自分の体を引っ提げて、
いつもお世話になっているメディカルアロマテラピーの扉を叩いた。
挨拶も早々に、「大丈夫?」と尋ねられた私は、「何とかしてください」と笑いながら返した。
2時間みっちりと全身を預けてプロの技に酔いしれる至福のひと時であればいいのだけれど、
痛みも疲労も感じられなくなっていた体が正常に戻り、軽やかさを感じられるようになるにつれ、
ツケが回ってきたと言ったらいいだろうか。
これまで溜め込んでいたらしい痛みや疲労が体の表面に浮かび上がってくるのだ。
身体の痛みや不調を感じることは、一見、厄介な感覚のように思うけれど、
身体が何かを感じられるということは、体の機能が正常に働いている証でもあり、
とてもありがたいことなのだと、駆け込む度に感じている。
問題は、その後の自分だ。
毎回、そのように感じているにも関わらず、自分の手に負えなくなるまで放置してしまうなんて、
決して褒められたものではないのだけれど、
何とかしてください、と甘えられる場所があって良かったと思ったりもしている。
軽やかさと正常に痛みを感じられる体に整えてもらい、お茶をいただいていた時のこと。
とても立派な鉢植えのアロエの姿が目に入った。
肉厚な葉をのびのびと広げた立派なアロエだったものだから、
私は鉢に近づき、それを指先で挟むようにして感触を確かめた。
その様子を見ていたセラピストの方が一本どうですか、と言いながら
立派な葉をパキッと折りラップで包んで持たせてくださった。
世界中で古より重宝されてきたアロエは「医者いらず」の名を持っているだけでなく、
あの美容マニアのクレオパトラもアロエでローションを作り、
お肌を保湿していたといわれている植物だ。
そのアロエの知識は今も私たちの傍にあり、火傷や切り傷に塗ったり、
ドリンクやヨーグルトなどの食べ物や、
スキンケア、医薬品など様々な場面で活用されている。
セラピストの方の話によると、
もともとアロエは、自律神経を調節したり、血管を拡張させたりする効果を持っているのだそう。
そして、漢方や中医学では体内の余分な熱を取り除いたり、お通じを良くする下剤効果、
胃腸を健やかに保ったり、イライラを抑えたり、熟睡度を上げてくれるなど、
自立神経の乱れや、そこからくる夏バテに効果がある「寒」の食材という位置づけなのだという。
アウトドアなどを楽しんだ夜に化粧水をたっぷりとお肌に含ませてクールダウンさせるように、
暑いこの時季はアロエを含んだデザートなどで
体内を程よくクールダウンさせるのも夏の不調を招かない方法のようだ。
このようなお話をすると、実用性と観葉植物を兼ねたアロエを
自家栽培してみようかしらと思う方もいらっしゃるかもしれないので、
アロエの注意事項も書き添えておきたいと思う。
アロエは種類が多く、中には薬効がとても強いものもあり、注意が必要だと言われることがある。
私たちが普段、手にしているドリンクやデザートに含まれているアロエは、アロエベラというもの。
他のアロエと比較してみると、葉が大きく内側のゼリー状の部分の苦味も少ないため、
ドリンクやデザートに使われていることが多い。
アロエを愛でるだけでなく、味わうことも楽しみのひとつにするのであれば、
この辺りの確認が必要になる。
そして、薬効が強いものは、その摂取量によっては
メリットにもデメリットにもなるということも覚えておきたいところ。
もちろん、一般的に薬効が強いと言われている場合は、
アロエの薬効成分の濃度を上げたお薬やサプリメントであることがほとんどなので、
自家栽培のアロエや、ドリンクやデザートに使われているアロエは、
それほど心配しなくて良いと言われている。
だけれども、体質や体調は人それぞれであるため、
一度に大量摂取せずに適量を大切に味わったり、体調と相談することをお忘れなく。
特に女性は様々なモノゴトが体内環境に影響を与える上に、
アロエの下剤効果は、妊娠中や整理中の女性にとっては危険が伴うもの。
美容と健康に良いものは、そのメリットばかりが注目されてしまいがちなので、
「この食材を積極的に摂りたい、摂ってみたい」と思われた際には、
その食材のメリットとデメリットの両方を確認した上で、
より安全な選択、判断を行えると良いのではないだろうか。
その日、セラピストからお福分けしていただいた肉厚のアロエは、
ピーラーで皮を剥いてゼリー状の部分を取り出し、
サイコロ状にカットしたものをハチミツレモンに入れて味わった。
グラスの中を浮遊する半透明のアロエの涼しげなこと。
ストローで勢いよく吸い上げすぎてむせてしまったのは、ここだけの話だけれども、
暑い夏を欲張って楽しく乗り切る術は、このようなところにも転がっていたようだ。
夏の暑さを溜め込んでいる体にアロエヨーグルトなど、いかがでしょうか。