夏でもない、秋でもない、ただ曇り空が広がっているある日。
いついつまでにやらなくては、いついつまでに済まさなくては。
様々な締め切りが積もり積もっている上に、
自分自身から向けられる「やらなくては」「済まさなくては」という言葉の呪縛を振り解きたくて、
曇り空に似合う少し大人っぽいR&BをBGMに選んで、
ランチには少し早いし、ランチと言うにはスイーツ感高めだけれど、
甘いパンケーキを焼いて、
さつまいものペーストが練り込んであるバニラアイスも添えた。
生憎のお天気が呪縛に力を貸してしまいそうな勢いだったけれど、
甘い香りに張りつめた心をゆるっゆるに緩めてもらいながら、
ブラックティーも準備して、パンケーキとアイスをひと口、口の中へ運んだ。
アァ……、シアワセ。
本当に欲しているものを口にしたときに感じる幸せは、
細胞レベルで喜んでいるようにも感じられて、
美味しいだけではない別の感覚が生まれる。
甘いものが当たり前のように身近にある「時」に身を置いていると、
ハイカロリーだとか、糖質制限だとか、体に関する色々も頭の中を過ぎるけれど、
世の中も、人も、どちらか片方だけで成り立っているわけではないのだから、と思ったりもして。
私は自分自身のバランスを取ることが上手なタイプではない。
いや、多分、かなり不器用な方に属する。
男女問わず素敵だ、魅力的だと感じる人は、自分を緩めること、引き締めること、
その双方のバランスの取り方が上手くて、自分自身を強く信じられる人なのかなと。
これは私が勝手に感じていることで、
魅力というものはそれだけではないのだけれど、
人と出会った時に、そう感じる瞬間がある。
私はまだまだだけれども、今日はパンケーキが美味しいから、まぁいっか。
パンケーキを味わいながら、何の役にも立たないようなことに思考を巡らせた、
夏でもない、秋でもない、ただ曇り空が広がっていたある日。
自分自身から向けられる言葉の呪縛にもがいているあなた、
今日は甘いパンケーキなんて、いかがでしょうか。