友人と食事をしていたときのこと。
食事中に「ごめん」そう言って友人がバッグの中からスマートフォンを取りだしては首を傾げ、
「柊希のスマホ、鳴ってない?」と言うことが数回続いた。
食事の手を動かしながら、鳴っていないと答える私を信用できなかったのか、
何度目かの友人からの問いかけのとき、「ちゃんと確認して」と言われてしまった。
私は、人と食事をしている時は余程のことがない限り、
着信音もバイブレーションもオフにしているため、
私のスマートフォンが鳴るはずも、振動するはずもないのだけれど、
とりあえず、友人に言われるがまま確認をした。
そして、「鳴ってた?」「鳴ってない」と、再び同じやり取りを交わし、
それってファントム・バイブレーション・シンドロームじゃないの?という話をした。
ポケットやバッグの中にあるスマートフォンや携帯電話がブルブルッと振動したはずなのに、
確認してみると何の通知も残っていなかったという経験をした事はないだろうか。
この、振動していないのに振動しているように感じる現象は、
スマートフォン依存症の一種だと考えられていて、
ファントム・バイブレーション・シンドローム(幻想振動症候群)と呼ばれている。
スマートフォンや携帯電話のバイブレーション機能に慣れていて、
尚且つ、仕事先や取引先、友人、知人、その他諸々の誰かしらと
常に連絡を取り合う状況が当たり前になっており、
連絡が来ていないだろうか、新しい着信やメールなどはないだろうかと、
小まめに確認することが習慣になっている人が経験しやすい現象なのだそう。
この現象を行動心理学などの視点から研究した方がいて、
ファントム・バイブレーション・シンドロームは、
人間の脳がスマートフォンや携帯電話の着信と振動の関りを覚えると、
振動に対して敏感になり、ありもしない振動にまで反応するようになることが分かったという。
私はバイブレーション機能をほとんど使用しておらず、
他人のスマートフォンの振動にも、
自分のスマートフォンの振動にも気付かないことが多いところを見ると、
私の脳は未だ着信と振動の関りを学習しきれていということのようだ。
ファントム・バイブレーション・シンドロームのことを初めて知ったとき、
スマートフォン依存症の症状だと言い切るのは大げさな気がしていたのだけれど、
私の周りを見渡してみると、想像以上に、この症状の経験者が多かった。
以前、ソーシャルデトックスの話題にも触れたけれど、
スマートフォンに触れない時間を意識して作ることも、
スマートフォンと長く付き合っていく上で必要なことなのかもしれない。
冒頭の友人は、その後、ソーシャルデトックスとスマートフォンデトックスを意識し始めたと言っていた。
一度学習してしまった脳が、それらの感覚を忘れるまでに、いったいどれ程の時間を要するのか。次回会った時にでも聞いてみようと思っている。
必須アイテムだからこそ、皆さんも、忍び寄るファントムにご注意あれ。
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