少し前に、ピカールのお話をしたからだと思うのだけれども、
最近、磨きたい、いや、磨き上げたい気分が沸々と湧き上がっている。
それならば、目につく場所を徹底的に磨きあげれば大掃除も完璧で一石二鳥じゃない!
と思うのだけれども、そうは問屋が卸さない。
私が磨き上げたい衝動に駆られるのは、
普段は人の目に触れることが無い引き出しの中のものや場所ばかり。
自分の心持ちひとつなのだけれど、
気分が乗りきらない場所は、自分にやらされている感でいっぱいになり、どうにもこうにも捗らない。
だから、磨き上げたいと思う気持ちに逆らわずに、
地味な作業を気分転換も兼ねて繰り返した。
シルバー製のものを無心で磨いていると、
プラチナの輝きというのは大げさだけれども素敵な輝きを取り戻した。
シルバーは昔から月の金属と呼ばれ大切にされてきたという。
その用いられ方は様々で一般的には、魔除けや幸せを運ぶアイテムとして使われている。
中でも銀食器を持っている家庭は裕福だと言われていたことから、
子どもが生まれると銀色のスプーンを贈るようになり、
そこには、魔除け以外にも、食べるものに困らない人生を、
幸多き人生をといった願いも込められるようになった。
この他にも、狼男にはシルバー製の弾丸を、吸血鬼にはシルバー製の杭を、という言い伝えまであるのだから、それはそれは大切に扱われてきたのだろう。
日本では「赤」がこのような役割を担ってきたようにも思う。
赤が担ってきた役割がそうさせているのか定かではないのだけれど、
日本では太陽の色として「赤」が使われていることが多く、
日本以外の国では黄色やオレンジ色を使うことが多い。
例えば「サウンド・オブ・ミュージック」の中に登場するドレミの歌。
この中で音階の「レ」は「レモンのレ」ではなく、「レ」は「黄金色をした太陽の雫」だと歌われている。
日本語で解釈すると少し訳がわからなくなるのだけれど、
この歌詞を知ってからドレミの歌を聴くとき、
私はこの「レ」のくだりが好きで身を入れて聴いてしまう瞬間がある。
色のお話をさせていただくことが多いけれど、
色は、人々にとって様々な役割や意味合いを持つものだと思うのだ。
その土地の様子や人々が見ている景色や文化、心情をさりげなく、
だけれども力強く表しており、
知れば知るほど、のぞき込むほどに、その奥深さや、背景にハッとさせられることがある。
無心でシルバーを磨いていたはずなのに相変わらず脳内では、このようなことが行き交い、
気付けば私の口は陽気にドレミの歌を口ずさんでいた。
ドレミって……と軽く突っ込みつつも、どうやら私のシルバー磨きリフレッシュは大成功のようだ。
色から繋がる世界をチラリとのぞく旅、今回はこれにてお開きでございます。
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