少し前にヨーロッパ土産としていただいていた、
チョコレートドリンク用の粉末チョコレートを取り出した。
日頃、自らチョコレートドリンクに手を伸ばすことは殆どないため、
わくわくしながらパッケージに記されている作り方を読んだ。
そこには、粉末を少なめのお湯で溶き、チョコレートの風味や濃厚さを存分に楽しんでと書かれてあった。
お好みでお砂糖やハチミツをたっぷり加えても良いとあったけれど、
文章から香り立つ甘さに、くらくらとしそうになった。
私は、甘さ控えめが好みなので低脂肪牛乳で楽しむことにした。
フランスにチョコレートが持ち込まれたのは、
ルイ13世に嫁いだスペインの王女や、ルイ14世に嫁いだマリア・テレサだという話がある。
当時のチョコレートは今のような固形タイプではなくドリンクタイプ。
その美味しさにはまったのは女性だけではなかった。
後の王、ルイ15世は女性好きでも有名だけれども、彼もチョコレートドリンクの魅力にはまった一人だ。
王でありながら自らキッチンに立ち、自分好みのチョコレートドリンクを作っていたといい、
彼のレシピも残っているのだ。
そのレシピのひとつには、削ったチョコレートに水を加えて熱しながら混ぜ、
そこに卵黄を溶き入れて、沸騰させないように注意しながら混ぜる。
チョコレートがトロリ滑らかになったら、砂糖やバニラなどを加えたそうだ。
当時、貴重であったに違いない食材を使って作るそれは、さぞかし美味しかっただろう。
頭の片隅でそのような話を思いだし、冷蔵庫を開けてみたのだけれど、
生憎、我が家の冷蔵庫には卵が無く、やはり私はシンプルに牛乳でいただくことにした。
更に時は過ぎ、ルイ16世に嫁いだマリー・アントワネットも、チョコレートドリンク愛飲者。
彼女のお話には過去記事でも触れているけれど、
彼女は、嫁ぎ先にチョコレート職人まで連れてきたという。
本当に様々なものをフランスへ持ち込んだ女性なのだと感心してしまう。
そして、今で言うところのオブラート、苦いお薬を飲むときなどに使うあのアイテムだけれども、
チョコレートで作ったオブラートが誕生したきっかけも彼女だ。
彼女は、薬剤師から処方されたお薬に対して、「こんなに苦いお薬は飲めないわ」と言い放ったそうで、
そこから、チョコレート職人が薬をチョコレートで包み込むことを提案したという。
もちろん、今のように薄いものではなかったのでしょうけれど、
当時のチョコレートの主流がドリンクタイプだったことを思えば、
薄い固形チョコレートは、それはそれは斬新なものだったのではないだろうか。
そして、後にこのチョコレートは「マリー・アントワネットのピストル」と名付けられる。
現在も、お薬抜きのスイーツとして「マリー・アントワネットのピストル」を購入することができ、
バレンタインの時季になると購入すると話す人を時々見かける。
ちなみに、この「ピストル」は拳銃という意味ではなく古金貨という意味で、
マリー・アントワネットの古金貨型のチョコレートという名前からも分かるように、
このチョコレートはコイン型のシンプルなものだ。
そのようなことを思い出しながら
出来がったミルクをたっぷり注いだチョコレートドリンクを手に
ベランダのガーデンテーブルへ移動した春の夕暮れどき。
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