PC画面との睨めっこが続いていたからか、それとも友人と久しぶりに有意義な会話を交わすことができたからか、
その日の夜は、神経が高ぶり、研ぎ澄まされ、眠れぬ夜となった。
スマートフォンをのぞきこむ気分にはなれなかったため、
年に1度、手に取るか取らないかというペースで触れている、
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に久しぶりに手を伸ばした。
『銀河鉄道の夜』は、主人公のジョバンニと、その幼馴染で親友であるカムパネルラが、銀河鉄道に乗り、
様々な人々と出会い、様々なことを感じ、考え、成長していく幻想的な物語だ。
ジョバンニは、様々な人々との出会いを通して、優しさや悲しさを感じ、本当の幸せについて考えるのだ。
ストーリーそのものは、既に頭の中に入っているのだけれど、
手に取り、ページを捲る度に、感じられるものや見える景色が変わるものだから、簡単に手放すことができずにいる。
途中、デジタル版を購入してみたりもしたのだけれど、頁を捲るときの乾いた紙の音が耳に心地よく、
現在手元にあるものは3代目か4代目の1冊である。
それも、前回手にしたときよりも随分と色褪せており、色褪せが本の内部を侵食し始めたように感じたため、そろそろ5代目だろうかと思っていたりもする。
宮沢賢治と言えば、本を手に取る機会が無い方でも名前くらいは、もしくは、作品タイトル1つくらいは、
記憶の片隅にあると言っても過言ではないくらい、知名度が高い作家だけれど、
世に送り出した作品の数に反比例するかのように、生前は無名に近かったと言われている。
そして、彼は、天才にして奇人だとか心優しくてストイックなどと言われることがあるけど、
そう言われるだけのことはあり、生前のエピソードには事欠かない人物でもある。
彼の代表的な長編小説は、活字の世界を飛び出し、
アニメ映画、実写映画、舞台など、様々な形で愛され続けているのだけれど、
私が気に入っているのはプラネタリウムなどで上映される
KAGAYAスタジオ制作のプラネタリウム番組の『銀河鉄道の夜』だ。
プラネタリウム番組の作品なので、これを見れば『銀河鉄道の夜』を読んだことになる、知ることができる、というようなものではないのだけれど、
こちらの作品を観たら、原作読んだことが無い子どもたちは、読んでみたいと。
大人が観れば、もう一度、原作を読んでみたいかも、と感じるのではないかと思う。
星も、いつの間にか見えにくくなりつつある世の中だけれども、
今年の夏は、ジョバンニ、カムパネルラと一緒に、幻想的な銀河鉄道の旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。
※以下、KAGAYAスタジオ制作のプラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」の予告編です。音が出ますので、閲覧環境にご注意ください。
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