その日は、どうしてもプロの腕に頼らなくてはいけない衣類を手に、クリーニング店へと向かった。
季節の変わり目だからだろう。
夏物のお手入れをお願いしに来た人や、これから活躍する秋冬物のお手入れの人で店内は混んでいた。
それならばと、一度店を出て、駅ビル内を散策してから戻ると、先ほどの混雑はウソのように解消されており、店内の気温は心なしか涼しくなったように感じられた。
顔馴染みの店員に衣類を手渡し、カウンターの奥へと目を向けると、先ほどの混雑が目に見えるかのように、
たくさんの衣類が依頼人ごとに分けられたまま積んであった。
今年の冬は、ファーを使うくらいに寒くなるのだろうかと思いながら、
積んであるお洋服の所々にあるファーアイテムを眺めていると、
店員が今日はファーのお手入れの依頼が多くてと笑った。
手軽に秋冬感を出すことができるファーは、様々なアイテムに使われている。
しかも、最近は、リアルファーとフェイクファーの見分けが難しいくらい、
リアルファーに近い見た目と手触りを兼ね備えたフェイクファーが増えている。
環境保護であったり、動物愛護といった点から見ても、ますますフェイクファーの完成度は高まっていくように思う。
とは言え、現段階でのフェイクファーは、経年劣化が早いところがウィークポイントという印象がある。
自宅でのお手入れができないものも多いため、シーズンを終えたら、そのまま保管している方が多く、
シーズン終了時にはキレイだと思っていたファーも、季節がめぐり、再度手に取ってみると想像以上に劣化しており、古くさい印象を受けることも多いという。
そして、その印象を何とかしたいと思われた方が、シーズン直前にクリーニング店へ持ち込まれるケースが多いというのだ。
リアルファーやフェイクファーの基本となるお手入れ方法は、過去にお話させていただいたため、
こちらでは割愛し、(※ファーやハラコの詳しいお手入れに関しては、下記の過去記事からどうぞ。)今回は、クリーニング店の方との雑談の中で飛び出した、
劣化によって質感や手触りが変わり、ボサッとしてしまったフェイクファーを蘇らせるケアのお話を簡単にと思っております。
ご興味ありましたら、ちらりと覘いていってくださいませ。
用意するのは、シリコン成分が含まれている寝癖スプレーと、100円ショップなどにある犬用ブラシのみ。
コンディションが悪くなっているファーに寝癖スプレーを直接かけて馴染ませたあと、
丁寧にブラッシングし、寝ぐせスプレーが完全に乾ききるのを待つだけだと言います。
時々、このようなお洗濯方法を見聞きしたことはありませんか。
ウール素材のお洗濯に使用する柔軟剤の代替品として、
ヘアトリートメントを薄めたものをお洗濯の仕上げに使うことで、毛玉が出来にくくなるというお手入れ方法です。
寝癖スプレーを使ったフェイクファーのお手入れは、この応用編のようなものかと思います。
ファーの線維が劣化して絡まり合うことで毛玉や毛束ができ、ツヤが消え、ボサッとした印象になる状態を、
髪の毛のキューティクルが剥がれている状態に見立て、
寝ぐせスプレーでファー繊維をコーティングして、手触りを整え、ファーの線維同士が絡まらないようにするという仕組みです。
ただ、クリーニング店の方のお話によると、ファー素材によって効果に差が出たり、
素材によっては寝癖スプレーとの相性が悪いということも稀にあるため、
まずは、処分しても後悔しないファーアイテムで試してみるとよいのではないだろうか、という話だった。
ワタクシ、この手の実験は試さずにはいられないため、
自宅に戻るとフェイクファーが付いているアイテムをいくつか実験用に準備しました。
結論から言うと、割と良い確率でファーに手触りの滑らかさと、ツヤが復活します。
ただ、使用する寝ぐせスプレーに香料が混ざっているものだと、
人によってはアイテム着用時、使用時に、香り酔いしてしまいそうですので、無香料を使用する方が無難かと思います。
また、お肌が弱い方の場合、顔周りのファーに寝ぐせスプレーを使用する際には、
そのスプレーの成分がお肌に触れても大丈夫かどうか、念の為、気を付けておく必要があるかとも。
この方法は、ファーだけでなくフリースやファータイプのラグなどにも使えますが、
寝癖スプレーを使わずとも、着用後に軽くブラッシングするだけで、ファーの風合いは思うよりも長く保つことができますので、
今年の秋冬は、普段からブラッシングケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。
それでも、お手持ちのファーアイテムが、何とかしたいほどの状態に変化してしまったときには、
過去記事でお話させていただいたフェイクファーのアイテムのケアや、
今回の寝癖スプレー&ブラシケア、などを使い分けながら
お気に入りアイテムを楽しんでくださいませ。
何かしらの暮らしのヒントにしていただけましたら幸いです。
のんびり、少しずつ、気持ちも秋支度をしてまいりましょ。
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