少々早いけれど、年末の大掃除も兼ねて持ち物の整理を始めた。
その日は、1時間ほど書籍類の仕分けをしていたのだけれど、
仕分けの最中に、手にしてから20年近く経っている絵本をパラパラと捲った。
装丁と少し厚めの紙は、共に随分と色褪せてしまったけれど、何度仕分けの機会が巡ってきても手放すことができない1冊だ。
しかし、今回はパラパラと風を送り込んだ際に、古書特有のにおいが気になった。
このような古書のにおいに詫び寂を感じながら、様々な思いを巡らせて楽しむ人もいるけれど、
私の直感は、情緒の欠片すら感じられない「かび臭い」というものだった。
どんなに丁寧に扱っていても、除湿剤や防虫剤を欠かさずにいても、
形あるモノは、こうして少しずつ劣化していくのだ。
しかも、少し厚めの、しっかりとした手触りの紙が使われているため、吸い込む湿気の量も他の本に比べて多かったのだろうと思った。
潔く手放すか……と思ったけれど、もう少しだけ手元に置いておきたい気持ちが勝り、
湿気を吸い込んで、かび臭くなってしまったそれを、補修することにした。
私が知っている本についた匂い消しの方法は2つだ。
日干しか虫干しをして、ある程度の湿気を飛ばし、
その後は適当な大きさにカットした新聞紙を軽く揉んでシワを付け、
そのシワを軽く伸ばしたら、本の間に何枚か挟んで新聞紙に湿気を吸い取ってもらう方法だ。
これを2、3日繰り返せば本に付いてしまった匂いの多くは、きれいに消えてしまう。
新聞紙が無い時には、御懐紙を使ったり、着物用の除湿シートで本を包んで、しばらく放置するというのも手だ。
しかし、もうこのような手法は古いのではないだろうか。
そう思って調べてみると、現代版の本の匂い消しの方法をいくつか発見した。
さすがナチュラルクリーニングの代表格である重曹だ。
ジップロックのような密封袋や容器に重曹と本を入れて、2、3日放置すれば匂いを消すことができるのだそう。
中には、ファブリーズなどの衣類用の消臭スプレーを染み込ませたタオルで、ページを軽く撫でていくという方法も見かけた。
今回は、手持ちの重曹を使うことができ、お天気に左右されない点に惹かれたこともあり、
1冊だけ、重曹を使った本の匂い消しを実践してみた。
数日後、確かに、本のかび臭さは消えたのだけれど、私の扱いが豪快過ぎたのか、
本自体が粉っぽくなってしまったように感じられたこともあり、残りの本は従来の日干しと新聞で匂いを消すことにした。
後日、日干しをする本をガーデンテーブルの上に並べながら、
新しい手法も大好きだけれど、本の匂い消しに限っては、お日様や自然の風、そして新聞紙を使う、昔ながらの手法が一番。
そのようなことを思ったある秋晴れの日。
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