深い緑色と黄色のビタミンカラーの瑞々しい鮮やかさに惹かれ、早生みかん(わせみかん)を購入した。
自宅に帰り、袋からフルーツボウルの中へと移していると、
思っていたよりも実の大きさが疎らだったことに気が付いた。
しかしそれもまた、早生みかん(わせみかん)の味わいのひとつようにも感じられて、
キッチンに立ったまま、小ぶりの甘そうなものを剥いた。
一瞬にして広がった香りは、口にする前から果汁が体中に染み渡るような、爽やかな香りだった。
少し早すぎただろうか。
ひと房口に含んだ印象は、甘いと言うには物足りなかったけれど、
秋とは言え、暑い日が顔を覗かせるこの時季の喉を潤すには十分な塩梅の果汁が、喉奥へと下りて行った。
私たちが口にするみかんの多くは温州みかんであることが多いけれど、
この温州みかん、収穫時期によって名前が変わっていることに気付いている方が、どれくらいいらっしゃるだろうか。
9月半ば辺りから皮の色が緑色のみかんが出回り始めるけれど、
この温州みかんは、極早生みかん(ごくわせみかん)と呼ばれており、
みかんシーズンのトップバッターのような存在だ。
甘さの中にしっかりとした酸味が感じられ、晩夏の時季に合った味をしている。
そして、10月、丁度今頃から11月頃に登場する次のみかんは、
早生みかん(わせみかん)と呼ばれ、皮の色は緑色が減り黄色の割合が増えているのが特徴だ。
極早生みかん(ごくわせみかん)よりも、甘さが増しているけれど、程よい酸味が感じられる、みかんだ。
このように、緑色から冬に食べるみかんのオレンジ色へと移り変わっていくと同時に、
みかんの甘味、皮の厚みも増していき、日持ちも長くなってくるのだ。
ちなみに、早生みかん(わせみかん)の後に登場するのは中生みかん(なかてみかん)と呼ばれ、
冬の風物詩のようなみかんは、晩生みかん(おくてみかん)と呼ぶ。
ワタクシ、この4種類のみかんが全て温州みかんだと知った時には、
同じ温州みかんを、4種類の呼び方で呼ぶなんてややこしい。
と、思ったのだけれど、改めて食べ比べて感じたことは、
同じみかんであっても、時期が異なれば味も別物と言ってもいいくらい変わるということだった。
今は、“みかん”と言っても、人の好みもあるだろうし、その時季に体が欲する味というものもあるだろうから、
この呼び分けは、ある意味とても親切なことのようにも感じている。
そう言えば、私たちが口にするみかんの多くは種が無いけれど、
この種無しみかんが受け入れられなかった時代があると何かで読んだことがある。
その理由は、種無しみかんは子孫が絶えてしまうことを連想させるからというものだ。
この美味しさを前にして、手を伸ばさなかったなんて、勿体ないようにも思うけれど、
そうすることで保たれてきたこと、守られてきたことなどもあるのだろうなと思ったりもして。
今の時季であれば、まだギリギリ極早生みかん(ごくわせみかん)から味わうことができるかと思いますので、
よろしければ、季節の移り変わりを五感で感じながら、
みかんの食べ比べなど楽しまれてみてはいかがでしょうか。
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