しっかりと冬を感じられているけれど、降り注ぐ陽射しは日によって違うのだろう。
先日、不自然な場所にポツンと咲いている菜の花を目にした。
黄色い小花は、一本の茎の上にちょこんと添えられたような、僅かなものだったけれど、
草花の色味が乏しい時季に見る黄色は、春に見るそれの数倍増し、鮮やかに見えた。
無意識に冬の黄色を欲したのか、春色を探し当てられる感覚にスイッチが入ったのか、その後はやたらと黄色いものに視線が向かうような日だった。
その中には、街路樹の根元に咲くタンポポの姿もあった。
我が家のリビングには、お正月用として準備した花が今も咲いてくれているため、花屋に用は無いと思っていたはずなのだけれど、
気持ちが静かに高揚したのか、気が付けば足は花屋へ向かっていた。
到着した店内には、ハウス栽培の春の花が数多く並べられており、久しぶりにかいだ甘い花の香りに意識がクラリとした。
そして、その日目に留まったのは、オレンジと赤い色をしたポピーだ。
繊細な花びらを風に靡かせる可愛らしい花だけれど、その種類は100を超えると言われており、日本でも馴染みがある「ひなげし」と呼ばれる花もポピーの一種だ。
私は、お花の世界を覗いてみたくてフラワーショップでアルバイトをした経験がある。
その時に、ポピーの品種を全て覚えることは、古事記に登場する神様の名前を覚えることにも似ているように思え、私には不可能だと早々に諦めたのだけれど、
その代わり、ポピー(けしの花)は、随分と古い時代から人のそばにあった花だといういくつかのエピソードは今でも少しだけ、記憶に残っている。
以前、七味のお話をさせていただいたときに、七味に含まれている芥子(けし)の実は、麻薬であるアヘンの原料になると触れたことがある。
この芥子(けし)の実は、別名ポピーシードとも呼ばれており、ポピーから摂れるものだ。
今回は、詳細は割愛させていただくけれど、七味で芥子(けし)の実を食べたり、スイーツや、あんぱんの上にぱらりとトッピングしてある芥子(けし)の実を食べたからと言って、麻薬の影響はない。
そもそも日本では、麻薬の原料になるようなものは流通しないため、この点に関しては心配無用であることをお伝えして、話をもとに戻すと、
ポピー(けしの花)の実にこのような麻薬要素が含まれていることはギリシャ時代には既に知られていたという。
そして、当時、睡眠薬や麻酔薬として、必要な場面で使われてきたという経緯がある花がポピーである。
一見、可愛らしくて可憐なポピーだけれど、内側に秘めてきるものは、なかなかインパクト大である。このように相反するものを内包しているものに対して、人は不思議と惹き付けられるものだけれど、
このポピーには、そのようなことを表しているかのようなエピソードが幾つか存在する。
その辺りのお話は、機会がありましたら、露地物のポピーが開花する頃にでも。
ポピーを目にする機会がありましたら、今回のお話の中の何かしらをちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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