その日、どうしても自分の手では洗うことができない衣類を袋に入れて家を出た。
開店と同時にお願いしてしまおうと思っていたこともあり、私には珍しく早い時間帯に家を出た。
クリーニング店に到着し自動ドアの前に立ってみたのだけれどドアが開かず、一歩下がっては上を見上げ、また一歩ドアに近づいては上を見上げを2、3回ほど繰り返した。
すると、後ろを通りかかったご婦人に、今日はいつもよりも1時間開店が遅い日だと言われ、思わず「えぇ……」と蚊の鳴くような声が出た。
ご婦人に「残念だったわね」と慰めのお言葉をいただいたあと、一旦家に戻るか否か迷ったけれど、出直すことにした。
慣れないことはするものじゃないということだろうか、いやいや、朝のウォーキングだと思えばいいじゃないか。
できるだけポジティブなことを脳内に巡らせながら自宅に戻った。
もうこの頃には残念気分は吹き飛んでおり、滞在時間30分で何ができるだろうかという、ちょっとしたゲーム感覚である。
そして、PCでいくつかの用事を済ませた後は、その日2度目の出陣である。
満を持してクリーニング店のドアの前に立つと、今度はスーッとドアが開いた。
当たり前のことなのだけれども、胸の中で小さなガッツポーズを決めて店内へ入った。
真っ白なカウンター上にお願いする洋服を全て乗せ、手続きをしていただいている間、店内をぐるりと見渡していると、
YシャツのY(ワイ)とは何でしょう?という見出しが目に留まった。
両腕を上方向斜め45度に広げた形のことかしら?と思いつつ読みすすめると、このようなことが記されていた。
正しくは英語のホワイトシャツだったそうなのだけれど、明治時代頃、アメリカ人が発する「ホワイトシャツ」という言葉の「ホ」が日本人には聞き取り難かったのか、聞こえなかったのか、
当時の日本人は、それをワイシャツと呼ぶようになったのだとか。
確かに聞きなれない言葉や初めて発する言葉は難しいけれど、ワイシャツの呼び名にも、このような背景があったようだ。
そう言えば、私たちが使う「ぐっすり寝た」という言葉も、
英語のグッド・スリープ(good sleep)が日本人の耳には「ぐっすり」と聞こえたからだとか、グッド・スリープを略して作られた言葉だ、などと言われているのを見聞きすることがある。
しかし、この「ぐっすり」という言葉は古から使われている正しい日本語なので、ワイシャツももしかしたら?と思い、軽く調べてみたのだけれど、どうやらこちらは、その通りのようだ。
いつもよりも早く活動したその日は、Yシャツの語源とクリーニング店の営業時間が変更していたことを知る日となった。
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