テレビを点けてザッピング。
テレビから微かに聞こえるような気がするのは、チャンネルが切り替わる瞬間のパチッという音。
チャンネルが一向に定まらず、見たいものがないのだと諦めた私の指先が最後に切り替えたチャンネル画面に映ったのは、古い時代劇だった。
昨今、テレビのプログラムから時代劇が姿を消しつつあり、「時代劇を観るには、自ら探し求めなくてはいけないからつまらない」と時代劇マニアの友人が嘆いていたことを思い出した。
友人の言葉を思い返しながら、しばらくの間、その時代劇を眺めていたのだけれど、ふと、侍と武士の違いは何なのだろうかと思った。
将軍に従うもの、武将に従う者の違いだろうか。
それとも生きた時代の違いによって呼び名が異なる、刀を携えている者ということだろうか。
知っているような気でいたのだけれど、どうやら私は何も知らぬまま、雰囲気だけで言い分けていることに気が付いた。
観たいテレビプログラムもなく手持ち無沙汰となった私は、軽く「侍」と「武士」の呼び分けをのぞいてみることにした。
今回は、そのようなお話を少し、と思っております。
ご興味ありましたら、お好きなお飲み物片手に、のんびりとお付き合い下さいませ。
侍と武士、どちらも似たような者を指す言葉ですが、先に生まれたのは「武士」なのだそう。
「武」という漢字には、武器を手に戦う者という意味が、「士」には男性の意味があり、「武士」は武器を手に戦う男性を表している。
そして、武士という肩書が生まれた平安時代には、当時の都だった京都から遠く離れた地に住む貴族たちもおり、この貴族間で争いが生じることもあったのだとか。
このとき、貴族たちは自分たちに仕えている者たちに武器を持たせて戦わせたといい、この出来事が「武士」という言葉を生んだきっかけのようだ。
そしてもう一方の「侍」だけれども、平安時代に生まれた武士たちは後に、「武士道」と呼ばれる思想を胸に、自分の一生をかけて皇族や貴族に仕えるようになったと言い、
ここから、人に「仕える」ことを意味する「侍う(さぶらう)」という言葉から「侍」の字を取り「侍(さむらい)」という肩書ができたようだ。
これらを比べてみると「侍」と「武士」は、似たような者を指す言葉であり、大差はないようにも感じられるけれど、
「武士」は誰でも自分の意志でなることが可能だけれど、
皇族や貴族、その他といった仕える者が居ない武士は、「侍」にはなれないということである。
漢字には、様々な意味や時代背景が何層にも重なって含まれていることがあるけれど、
似たようなモノを表す言葉を比較してみると、時代背景だけではなく時代の流れまで追うことができるようだ。
「侍」や「武士」という言葉に触れる機会がありました際には、今回のお話をちりと思い出していただけましたら幸いです。
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