人は予想外のものを目にしたとき、二度見、三度見をすると言うけれど、本当だと思った。
10日程前だったと思うのだけれど、道すがら、昔ながらの掲示板が目に入った。
様々な地域情報もスマートフォンひとつで手に入るようになったけれど、手書きのお知らせが貼り出されている光景は、不思議と気持ちを和ませてくれるように思う。
私も何となく和んだような気分で掲示板の前を通りかけて、冒頭の二度見である。
その掲示板には、筆字で「風鈴の音に苦情が出ております。風鈴を吊り下げる時間帯にご配慮願います。」と書かれた紙が貼ってあった。
風鈴の音色を自由に楽しむことができない場所もあるのかと、少し驚いた。
外に吊り下げられた風鈴が夜風に靡き、ひと晩中チリンチリンと音を奏でていたのだろうか。
それとも、これだけ様々な音が行き交う、静かだとは言い難い場所だと、騒音のひとつとしてこのような苦情が出てもなんら不思議ではない、ということなのだろうか。
風鈴の音を想像したときに、涼やかなイメージを思い浮かべることができる方は、実際に風鈴の音を聞くと、体温が少し下がると言われている。
私は涼やかなイメージが思い浮かぶこともあり、夏が過ぎた頃に時折耳にする、夏の忘れ物のような風鈴の音色にブルッと身震いし、風鈴を早く取り込んで欲しいと感じたことがあるけれど、夏はこれからである。
貼り紙にあった苦情の詳細までは分からなかったけれど、風鈴を楽しむにも様々な配慮が必要ということなのだろうと思った。
暑い日々に涼やかさを運んできてくれる風鈴は、中国から伝わったもので、もとは「風鐸(ふうたく)」と呼ばれていたという。
本場では、占風鐸と呼ばれる占術に使われていたのだけれど、日本では占術の道具としてではなく、邪気祓い、災厄除け、魔除けといった用途で定着したのだとか。
随分と古い時代に日本に伝わってきた風鐸(ふうたく)は、平安貴族たちも軒先に吊るして邪気を祓っていたといい、この頃から風鐸(ふうたく)は「風鈴」と呼ばれるようになったといわれている。
風鈴の本来の用途は邪気祓いだったということもあり、風鈴そのものに季節の要素は含まれていないはずなのだけれど、
いつ頃からか、邪気祓いだけでなく、目や耳で楽しむ夏の風物詩となったようだ。
風鈴祭りや風鈴市などが行われる季節です。
そしてこの時季は、お寺の屋根の四隅に風鈴が吊るされていることもあります。
これは邪気祓いや再厄除け、魔除けとして吊り下げられているそうなので、ご旅行やお散歩時に目にする機会がありました際には、風鈴本来の名残を感じてみてはいかがでしょう。
厳しい暑さや日常のあれやこれやに飲み込まれそうになることもありますけれど、
そのような時には早めにひと息ついて、風鈴の音に耳を傾けてみるのも、上手に夏とお付き合いするための方法なのかもしれません。
本日も、皆さんに良き風が吹きますように☆彡
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