もみくちゃにされるであろう混雑を覚悟して電車に乗ったのだけれど、車内奥へと人波に流されるがまま流されたところ、目の前に席が空いており、そこへスッポリとはまり込む形で座ることになった。
自分の意志や、それを貫くことも素敵だけれど、何も考えず、流れにも逆らわないという選択も、このようなハッピーへと送り届けてくれるものだから、時と場合によっては、いいものである。
その日は、まだまだ残暑厳しい日で、半袖姿の人や汗をハンカチで拭う人が目立っていた。
私は座ることができたこともあり、適度な冷風を浴びながら人間ウォッチングをしていたのだけれど、少し離れたところに立っていた女性が、まとめ髪を解く様子に目がとまった。
そして思わず心の中で「黒柳徹子さん!」と声を上げたのである。
黒柳徹子さん(以下、徹子さん)は、あのトレードマークでもある玉ねぎヘアーの中にキャンディーを忍ばせている。
周りの方々にそう話しても、なかなか信じていただけないのだけれど、私は徹子さんが玉ねぎヘアーの中からキャンディーを取り出して、お話相手に差し出す場面をテレビで何度も拝見しているのだ。
そして、この日。電車の中で目にした女性は、まとめ髪の中から保冷剤を取り出したのである。
その女性の背後に立っていた別の女性たちも、そのことに気が付き、「目を丸くする」と言われる表情のお手本のような表情をしていたものだから、私は思わず口元が緩んでしまった。
その女性は、しばらく俯いていたのだけれど、どうやら保冷剤を新しいものに交換したかったようで、再び保冷剤を慣れた手つきでまとめ髪の中に納め、アップスタイルを完成させた。
髪の毛の中を収納スペースとして使用している人と言えば、徹子さんしか知らなかったけれど、他にもいらっしゃるのかと混雑した電車内で静かに思った出来事となった。
それからしばらく経ってからである。
暑い夏を乗り切る方法のひとつとして、まとめ髪の中に保冷剤を仕込むという動画を偶然にも目にし、メジャーとまでは言わないけれど実践している方がそれなりに居ると知った。
しかし、季節は秋である。
既に保冷剤を仕込むほどの暑さは過ぎ去っており、私がそれにトライする時季は過ぎてしまっていた。
想像するに、私のヘアアレンジテクニックでは保冷剤の端が、髪の毛の隙間から飛び出してしまう確率が高すぎるため実践することは無いように思うけれど、
日本の酷暑の中でアウトドアを楽しむときなどに使える、ちょっとしたアイデアなのかもしれない。
徹子さんがこれを知ったらトライするだろうか、とふと思う。
好奇心旺盛な徹子さんだ。
来年の夏辺り、涼し気な顔で「今年の私は頭の中に保冷剤を仕込んでいますのよ」などと言い放ってくれないだろうかと淡い期待を抱きつつ、このお話はお開きとさせていただきます。
いつも、ここへ足を運んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
本日も、良き日となりますように☆彡
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