幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

「港」と「湊」は使い分けなくてはいけないの?

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数か月前、港町近くを散策していたときのこと。

その街に溶け込んでいる古い看板の数々に目が留まった。

その看板の中には「港町」と「湊町」の両方の記載があり、そう言えば「みなと」という文字は、どのように使い分けられているのだろうか、と思った。

一般的に使われる文字は「港」で、もう片方の「湊」は地名や人名に使われる旧字という印象を勝手に持っていたものだから調べたことは無く、確かなことは分からなかった。

散策をしながら、実際のところはどうなのだろうかと思いはしたものの、意識は目の前に飛び込んでくる非日常の諸々に移り、

気付けば、開け放った窓から流れ込む風は少しずつ冷たさを増し、季節はすっかり秋になってしまっていた。

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今回は、「港」と「湊」に使い分けはあるのか、否か。

そのようなお話を少し、と思っております。

お好きなお飲みもの片手に、又は電車移動の車内で、ちょっとした読書気分でお付き合いくださいませ。

「みなと」とは、船が停泊できるようにした場所を意味しており、漢字では「港」と「湊」の2種類の文字で表すことができます。

こちらの「港」という文字は、水を表す「さんずい」と町や村の通路を表す「巷」を合わせた文字で、水の通り道を表現していたといいます。

ここで言う水の通り道というのは、単純に船が行き来できる水路そのもののことで、私たちが想像するような、船の発着場である「みなと」ではなかったのだそう。

一方の「湊」という文字は、水を表す「さんずい」と、たくさんの物や人が集まるという意味を持ち、神様へお供えものを差し上げる様子を表した文字「奏」を合わせた文字です。

ここから、「湊」という文字は、たくさんの船が集まる場所という意味で使われており、現在私たちが知る「みなと」と同じものを指していたそうです。

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「湊」と言う文字を旧字のように感じている方は、このような背景を何となくイメージとして感じ取っているからなのかもしれませんね。

漢字が持っている意味合いを紐解いてみると、本来は、「港」と「湊」にはそれぞれを表す意味合いがあり、私たちが知っている船の発着場所は本来「湊」と書き記していたけれど、

水路そのものを表していた「港」という文字が、いつの間にか船の発着場所という意味でも使われるようになり一般的な表記として定着したようです。

現在、この2つの文字を使い分ける必要はなく、「みなと」を漢字で書く際には、拘らずに「港町」と使うも良し、歴史ある「みなと」に対しては拘って「湊町」と使うも良し、

この辺りは使い手の感性や伝えたい雰囲気によって自由に選ぶことができる文字ということのようですが、「港」と書き記しておくと間違いがないという扱われ方をしているようです。

ただ、地名や人名、更には港の名として「〇〇湊」と記される場合には、大切にされている歴史や文字に込められた何かがあるということなのかもしれないので、その辺りに意識を向けてみることで、また少しものごとを深く広く楽しむことができるように思います。

シンプルで分かり易いものも良いけれど、ちょっとした使い分けで見える景色、見せる景色を変えられるのは、日本語の特徴であり醍醐味だと改めて。

「港」という文字に触れる機会がありました際には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/