4月にいただいたバラの花が1か月経った頃、花瓶の中で色褪せぬままドライフラワーになった。
果てた姿までも美しいと感じられるのは、バラの気品がそうさせるのだろうか。
想像以上に長い時間、楽しませていただいたバラを花瓶から取り出した。
花瓶に対して長すぎた茎は途中からカットし、茎だけの状態で生けていたのだけれど、こちらは赤みを帯びた新芽が次々に出てきて、いつか新しい花を咲かせるのではないだろうかという状態に成長している。
そのまま捨ててしまうには忍びなかったので、こちらは、短い筒状をしたシンプルな花瓶に生け直し、もうしばらく緑色を楽しむことにした。
長く間咲いていたバラと言えば、江戸時代の頃の呼び名だったと記憶しているのだけれど、バラには長春花(ちょうしゅんか)という別名がある。
バラは5月頃から咲き始める品種が多いけれど、春が過ぎても咲いていることから、春を長く感じられる花ということで、長春花(ちょうしゅんか)や長春(ちょうしゅん)などと呼ばれていたそうだ。
そして、この名は「長春色(ちょうしゅんいろ)」と言って日本の伝統色名にも使われている。
各国に、その国ならではの伝統色があるけれど、日本の伝統色は様々な色のグラデーションを細かく切り取ったような繊細さがある。
移りゆく季節の中で自然の中にある色を繊細に感じ取った、先人たちの歓声の豊かさあってこその色揃えだ。
そして、着物などを想像していただくとイメージを掴みやすいかと思うのだけれど、一見合わないように見える色同士を合わせても、色同士が喧嘩せずに馴染むのは、日本の伝統色が自然の色を繊細に切り取られて作られた色だからではないかと想像する。
日本には、このような伝統色と呼ばれる色が多数あるのだけれど、「長春色(ちょうしゅんいろ)」は、ピンク濃いめの苺ミルク色に淡い紫色を混ぜ込んだような、やわらかくも深みのあるピンク色をしている。
一見、淡い紫色に見えることもあるため、ピンク色だとは思わずに長春色に触れている方もいらっしゃるかもしれないけれど、大人に映える上品なピンク色をしているように思う。
日本で手に取る機会があるバラは控えめな香りのものが多いけれど、これは、香りが強いバラは持ちが悪く切り花に適さないため、控えめな香りのバラが店頭に並んでいることが多い。
中には持ちが悪くても良いから、できるだけ香りが強いバラが欲しいと言う方もいらっしゃるのだけれど、香りが強いバラはトゲが多く鋭いものが多い傾向にあるため、日本で好まれているバラはトゲが少なく日持ちする、香り控えめのものが主流である。
バラの香りに対してアレルギー症状が出ると言う方もいらっしゃるので、皆さんにおすすめすることはできないのですが、もうしばらくバラの季節が続きます。
バラを目にする機会がありました折には、長春花の名を思い出すもよし、長春色やバラの香りとトゲの関係を思い出すも良し。
今回の何かしらを楽しんでいただけましたら幸いです。
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