とてもメジャーなタータンチェック柄、実は日本でいうところの“家紋”のようなものだという事をご存知でしょうか?
今回は秋冬、私たちがファッションで取り入れる事の多い“タータンチェック柄”について、お話ししてみたいと思います。
お好きなお飲み物片手に、のんびりとお楽しみくださいませ。
タータンは、スコットランド伝統の格子柄で長年受け継がれてきた模様です。
しかし、単なる模様というだけではなく、スコットランド人の長い歴史の中で、文字を持っていなかった民族間において、相手の所属を見分けるための大切な目印だったのです。
その目印の在り方も時代とともに複雑化していきました。
血縁関係の団結を重視するスコットランドの社会システムをもとに、タータン柄のチュニックやショールを制服のように着て、自分の所属団結を表わすようになっていったのです。
部族間の争いも絶えなかったスコットランドでは、戦場で敵と味方を見分けるのにも使われていたといいます。
日本の戦場で見られた旗印にも似た役割といったところでしょう。
また、一族を現す文様であるタータン柄は、日本の「家紋」と比較されることもあるのですが、違う点があるのです。
日本の家紋の場合、本家も分家も同じ家紋を使うのですが、彼らは、分家は新しいパターンを使うのです。
更に、一つの氏族(クラン)や一族(ファミリー)の中でもTPOに合わせて、日常用、正装用、狩猟やスポーツ用、喪に服する時用と、いくつかのタータン柄を使い分けていたののだとか。
柄は好きなものを使えた訳ではなく、農民や兵士は1色、将校は2色、族長は3色で、貴族は4~5色使いが許され、王族は7色使う事ができました。
使う色も紫は位の高い色として扱われていて王様のみが使う事ができたそうです。
位が上がるほど色も柄も複雑で贅沢なタータン柄を身に着けることができたのです。
私たちが何気なく手に取っているタータンチェックには、このような歴史と意味合いがあります。
スコットランドにタータンチェックのマフラーやストールを作製しているカシミヤ工場があるのですが、以前、私はそこへ足を運ばせていただく機会がありました。
素敵なタータンチェックの数々に心が躍り、貴重な経験なので1枚作っていただこうと、ある柄を手にしました。
作業をしながらチラチラとこちらの様子を伺っているベテラン職人の方に言われたのです。
「その柄は男柄すぎる、あなたが使うならあっちの柄から選んだ方が品が良くて素敵だ」と。
当時、タータンチェックの歴史も意味も全く知らなかった私は腑に落ちない顔をしたのでしょう。
工場の方が先程のお話を私にしてくださいました。
「(タータンチェックは、そういう風に見るのか)」
その後は気になる柄を手に取っては幾度も、その柄が現している意味を訊ね、迷いに迷って、ようやく1枚を選びました。
その選んだ柄を手に、先程の職人の元へ行き、「これにしました!」というと、「まぁまぁ、初めてにしては良い柄を選んだな」と返ってきました。
その時手にしたカシミアのマフラーは宝物です。
長い時を経た今でも変わらぬ風合いと肌触り、そして、この記憶と共に私のクローゼットにあります。
この時期になるとお世話になっている大切なアイテムです。
皆様のお手元にあるタータン柄にも、その柄が発しているメッセージがあるのかもしれません。
今回はタータンチェック柄のお話しでした。
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