年末年始の慌ただしさを振り返りつつ、今年も着々と時を刻んでいくのだなと、他人事のような思いでキッチンの水を出した。
程よく温められた水道水を使って作業をすることもできるのだけれど、私は、手の表面を覆ってくれている薄い皮脂ベールが根こそぎ洗い流されていくような感覚を覚えるため、出来るだけ冷たいままの水を使うことが多い。
水の冷たさなどで手が荒れるという話を耳にすることを思うと、私の手は少しばかり感覚がズレているのかもしれないと思ったり、水の冷たさを辛く感じる日も多々あるのだけれど、水に触れ、背筋がピンと伸びて毛穴がキュッと引き締まる様な緊張感も、悪くはないように思う。
一年で最も寒い冬の時期は「寒(かん)」と呼ばれている。
天気予報などで「寒の入り」と耳にすることがあるけれど、あの「寒」である。
「寒の入り」は、季節を細かく分けで表す二十四節気(にじゅうしせっき)にある、小寒(しょうかん)という日のことで、この寒の時期が明けると立春となる。
立春の頃になると立春を祝うお菓子に「寒の明け」と名が付けられているものを目にすることがあるけれど、これは立春が別名「寒の明け」と呼ばれているからである。
今年(2020年)の寒の入りは1月6日なので、ここから2月3日の寒の明けまでの間を、寒、寒中などと呼んでおり、一年で最も寒さが厳しい時期だと言われている。
水道の水も外気温も、肌を刺すような冷たさがあるけれど、それもそのはず。
暦の上では、本格的な冬に突入したばかりの寒の内。
しばらくは、水に触れる度にキュッと身が引き締まる日が続きそうだ。
その一方で、動き始めた春もある。
こちらも暦が知らせてくれているのだけれど、動き始めた春を伝えてくれている暦は七十二候(しちじゅうにこう)である。
こちらの暦は、春夏秋冬を24の季節に区切り、その24に区切った季節を更に細かく区切って、季節ならではの風景や動植物の様子を表したタイトルが付けてあるようなもので、本日1月10日から始まる5日間には「水泉動く(すいせんうごく)」というタイトルが付けられている。
水泉は、読んで字のごとく自然界にある湧き出る水のことなのだけれど、地中で凍っていた水が徐々に融けて動き始める頃であり、春に向けての準備が始まったことを告げている。
地中だけでなく、まだ咲きはしないけれど、春に開花する植物の蕾が膨らみ始めるのもこの頃である。
物事が動き出すときというのは、思ったり、考えたり、願ったりといった「静」と、叶えるための行動という「動」のどちらか片方だけがあるときではなく、その双方があるときであるように思うから、
私たちにとっては、これから寒さがもう一段厳しくなるのだけれど、
春になったらトライしてみたいことに思いを巡らせてみたり、少しずつ段取りをつけ始めるのにも良い頃なのかもしれない。
寒が開けるのはもう少し先のことですけれど、寒の間は寒の間にできることを。
もちろん、この時季ならではの諸々を楽しみながらまいりましょ。
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