冬の気配を少しだけ残したような冷たさの中を、ほのかに温かい風が駆け抜けた。
その風は、温かい部屋で食べる冷たいアイスの美味しさに、少しだけ似ていたように思う。
人はナンダカンダ言って欲張りだから、異なる心地よさを同時に得ているとき、胸の内側辺りで静かに高揚するのかもしれない。
この時季に吹く春風のことを「木の芽風(このめかぜ)」という。
芽吹きはじめたレッシュで柔らかな新芽の香りまで漂ってきそうな、美しい言葉だ。
そして、諸説あるのだけれど、新芽が膨らんで張ることから、この季節を「春(はる)」と呼ぶのだとか。
先日は、出先でお財布売場のそばを歩いていると、陳列棚に並べられた春色をしたお財布の数々に目が留まった。
それらを視界の中に捉えつつも足を止めることなく素通りしたのだけれど、鮮やかな色は、私が思っていた以上に気持ちを華やかにしてくれた。
一年の中には幾度か、お財布の買い替えに適していると言われるタイミングがある。
そのタイミングは、古から受継がれている様々な知識を使って導きだされたものもあれば、言霊を味方につけた日本人らしいもの、自分自身の節目でもある誕生日を使うなど様々である。
この時季は、多くの命が芽吹き、膨らみ、パンパンに張り、後に花を咲かせ、実りに繋げるという流れがあることから、
お財布も富でパンパンに張るようにという願いを込めて新調するのに適したタイミングとして知られている。
私はお財布を春に新調したことは無いのだけれど、こうして売り場の近くを通ると、春財布のカラフルさには、木々や草花、その他の生命力に通じるものがあるように思う。
様々な視点や知識、各々の拘りや好みといった条件を持ち出すと、良しとするタイミングも選ぶものも変わってはくるけれど、
色が持つ力と季節が持つ力、そこに言霊の力が合わさることで生まれるタイミングに縁起を担ぐ。
これはこれで「笑う門には福来る」ではないけれど「楽しむ角には幸来る」でいいじゃないか、と思う。
ちなみに、春財布への買い替えに適している期間というものにも諸説ある。
ここでは、二十四節気が登場するのだけれど、
冬至から年を跨いで2/19の雨水までの期間を春財布への買い替えに適していると言うもの、
元旦から5/6の立夏まで、2/4の立春から3/6の啓蟄まで、2/4の立春から5/6の立夏まで、という説があり、いい意味で選び放題である。
ここに、自分自身の誕生日を重ね合わせたり、様々な吉日の中から自分にとってスペシャルな吉日や、欲しい意味合いの吉日を重ねるのも、縁起担ぎのひとつだという。
特別拘っているわけではないけれど、
春の陽気に誘われて、お財布選びをもっと楽しんでみようかしらと、ポジティブな気持ちを抱いている方は、春財布選びに吉日トッピングの追加など、いかがでしょうか。
やはり春は、生命力漲る季節なのだと今年も春の息吹に触れて思う午後である。
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