夏の風物詩のひとつと言えば「花火」。
その中でも夜空のキャンバスに、ぱーっと鮮やかな花を咲かせる打ち上げ花火は、大人の心も子どもの心も鷲掴みにする。
花火が花開くあの時ばかりは星々の輝きは影を潜め、しばしの間、夜空の主役を花火に明け渡す。
そして、生温い夏の夜風にのって微かに香る火薬のにおいもまた夏の風物詩かもしれない。
私たちが子どもの頃から親しんできた打ち上げ花火は、会場付近に居なくても楽しむことができる。
家のベランダから、何処かで行われている花火大会のお福分けを眺めながら飲むお酒もいいものだ。
そのような事を思っていたのだけれども、
このような楽しみ方が出来るのは日本の花火だからこそ、だということをご存知だろうか。
今、日本の花火師の技術は世界一だと言われており、海外でも日本の打ち上げ花火の人気が高まっているのだ。
どうして、日本の打ち上げ花火が世界一だと言われているのか、それは、花火の歴史の違い、構造上の違いなどがあるという。
欧米で打ち上げられている花火は、一種類の火薬で作るシンプルなものが多く、
打ち上げ花火の形状も日本の球状とは違い、お茶筒のような形をしているそうだ。
そして、欧米の花火の始まりは、貴族などの裕福で権力のある人々が楽しむものだった。
貴族が見ている方向にだけキレイな花火姿を見せられれば良かったため、日本の花火のように複雑な球状にする必要性が無かったのだそう。
そして、今も日本のように打ち上げ花火だけを単独で愛でる楽しみ方ではなく、
音楽や映像、ライトップなどに含まれる演出方法のひとつとして楽しむため、
打ち上げ花火も技術も進化、発展する機会がなかったと言われている。
一方、日本の花火は、花火師が火薬が飛び出す方向を緻密に計算し、
どの方向からでも同じ形の花火が楽しめるように作られる。
これは、打ち上げ花火が庶民の楽しみとして愛されてきた証である。
各々の場所にいる大勢の人々が皆で同じ夜空を見上げ、うっとりと眺めることが出来ている花火は、
花火師の皆さんの繊細で高度な職人技あってこそのもの。
「世界一華麗な芸術美」とも称される日本の打ち上げ花火は、私たちが世界に誇れるものの一つなのだ。
この打ち上げ花火の起源をたどると、もとはイギリスから伝えられている。
種子島に鉄砲と火薬が伝えられた後に、イギリスの国王使節が徳川家康に披露したのが始まりなのだとか。
そして、家康や将軍家などから火が付いた花火は、庶民の間にも広がった。
今はさすがに耳にする機会は少ないけれど、
皆さんも「たまや~、かぎや~」といった花火が上がる際の掛け声が残っているのをご存知かと。
これは、江戸に表れた「玉屋」と「鍵屋」という人気花火師を称える掛け声だった。
使わなくなった掛け声だけれども、多くの人が知っているという事も、
花火が日本中で愛され続けてきたしるしなのかもしれない。
私たちが打ち上げ花火を見るのは、主に、夏だけれど、
花火師の方々は一年を通して打ち上げ花火の製作に携わっている。
丹精込めて作り上げた打ち上げ花火の数々。
その一つ一つの花火に込められた、花火師たちのメッセージや感性が、
今年の夏も夜空に色鮮やかな花となって解き放たれるのだ。
世界中の人々が生で観たいと思っている日本の打ち上げ花火、
咲いた瞬間から散り行く花火は夏の儚さも含んでいるけれど、華やかさと儚さと、
花火師たちの思いを感じながら眺める花火は格別ではないだろうか。
今年の打ち上げ花火に、あなたは何を思い、何を感じますか?
きっと、夏も花火と同じで、あっという間です。
大切な方々と思いっきり楽しんでくださいませ。
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